閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

華氏911

製作年度:2004年
製作国:アメリカ
上映時間:112分
監督:マイケル・ムーア
脚本:マイケル・ムーア
出演:
マイケル・ムーアジョージ・W・ブッシュ
場所:ユナイテッド・シネマとしまえん
評価:☆☆★

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銃社会であるアメリカ社会の脆さを浮き彫りにした前作『ボーリング・フォー・コロンバイン』には,様々な事実の背景が次々に明らかになっていく驚きがあった.
ブッシュの中東政策の愚かさを批判する今回の作品は,始めに結論ありきで,「驚き」に乏しい.映像もムーア自身が集めた部分が少なく,既にメディアに発表されていたものを再構成したという印象が強い.それでも二時間,「楽しめる」作りにはなっていた.『華氏911』のメッセージは単純で,いまさらと言っていいほど陳腐な正義であるのだが,この程度の真実さえアメリカの愛国的雰囲気の中でこれまでないがしろにされていたという事実がショックといえばショックである.
ただ『コロンバイン』が銃による悲劇的事件の背景にある複雑で悲観的な状況の迷路にムーアが入り込んでるに対し,今回は国際情勢の要素が複雑にからみあう中での事件にも関わらず,ムーアはそうした複雑な要素をブッシュ一人の無能力さに期するのは,あまりに自体を単純化しすぎているように思える.こうした単純化はブッシュ政権のプロパガンダと表裏一体であるようにも思える.

上映館のユナイテッド・シネマとしまえんは,七月にオープンしたばかりの新しいシネマ・コンプレックス.きれいなのはもちろん,ロビーも館内の座席も広々していてじつに感じがいい.『華氏911』は平日の昼の回とはいえがら空き.大混雑を予想していたのだけど.オープン早々,話題作がこんな入りで大丈夫なのだろうか.空いているのは観る側にとってはいいことなんだけど.