閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

そして父になる

そして父になる(2013)

  • 上映時間120分
  • 製作国日本
  • 初公開年月:2013/09/28
  • 監督:是枝裕和
  • 製作:亀山千広畠中達郎依田巽
  • 脚本:是枝裕和
  • 撮影:瀧本幹也
  • 美術:三ツ松けいこ
  • 衣裳:黒澤和子
  • 編集:是枝裕和
  • キャスティング:田端利江
  • 出演:福山雅治、尾野真千子真木よう子リリー・フランキー二宮慶多横升火玄
  • 映画館:ユナイテッドシネマとしまえん
  • 評価:☆☆☆☆

    乳児取り違えは高度成長期には実際にしばしばあったそうだ。現代の日本ではさすがにきわめて稀であると思うが、それでも皆無ではないだろう。6年間育てた子が我が子でないと知ったとき、私たちはその事実をどのように受けとめるだろうか?『そして父になる』はこうした状況に置かれた親子の葛藤をじっくりと丁寧に描く。とりわけ人の親がこの作品を見たら、彼らに感情移入せずにこの作品を見ることは困難だろう。

  • 多くの場合、こうした乳児取り替えは最終的には子供の交換というかたちで終わるという。こういった場合親も子もどうにも解消できないわだかまりを抱えつつ、一生を過ごすことになるに違いない。現実にこうした悲劇が起こったことを思うと、なんともやりきれない残酷な物語だ。この映画のなかで描かれる家族関係が脆い結晶のようなものであり、その結晶を壊さないように人々が優しく、繊細に振る舞うのが、見ていて堪らない。最初は尾野真千子真木よう子という双方の妻があまりに美しすぎることにちょっと白けていたのだけれど、その美しさも息苦しい悲壮さのなかで段々気にならなくなった。グールドの奏でる《ゴルトベルク変奏曲》が絶妙のタイミングで挿入させる。
  • 是枝裕和の作品は好きでほとんど見ているけれど、ジャーナリスティクで扇情的な素材の選択、扱い方に気づいたとき、ちょっとひっかかりを感じる。ねらいどころが巧妙なのだ。あんまり素直に感動してはいけない、一回とりあえず作品の中に入って、それからもう一度遠くから見直すぐらいの感じで楽しみたい。