閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

パプリカ

http://www.sonypictures.jp/movies/paprika/site/home.html

上映時間 90分
製作国 日本
監督: 今敏
アニメーション制作: マッドハウス
プロデューサー: 丸田順悟 滝山雅夫
原作: 筒井康隆 『パプリカ』(中公文庫/新潮文庫刊)
脚本: 水上清資 今敏
編集: 瀬山武司
音楽: 平沢進
キャラクターデザイン: 安藤雅司
作画監督: 安藤雅司
声の出演:
林原めぐみ パプリカ/千葉敦子
古谷徹 時田浩作
江守徹 乾精次郎
堀勝之祐 島寅太郎
大塚明夫 粉川利美
山寺宏一 小山内守雄
田中秀幸 あいつ
こおろぎさとみ 日本人形
阪口大助 氷室啓
岩田光央 津村保志
愛河里花子 柿本信枝
太田真一郎 レポーター
ふくまつ進紗 奇術師
川瀬晶子 ウェイトレス
泉久実子 アナウンス
勝杏里 研究員
宮下栄治 所員
三戸耕三 ピエロ
筒井康隆 玖珂

  • 劇場:池袋 テアトルダイヤ
  • 評価:☆☆☆☆★

細部まで徹底的に書き込まれた繊細さと大胆な創意が共存する映像表現の見事さに酔いしれる.夢という無意識の世界のグロテスクさが,驚異的な作画技術によって見事に表現されている.今敏監督の『パプリカ』では,極上のシュールリアリズム的な美術表現をアニメという形態で堪能することができる.90分という枠組みで物語を提示するため,1993年に刊行された原作にかなり改編が加えられている.ダイアローグと物語展開の奇妙な空洞感は独特の軽やかさを作品に与えている.しかし原作の世界観はしっかりと尊重されていて,特にコケットな魅力に富んだパプリカの人物造型は原作のイメージを見事に具象化しているように僕は思った.
悪夢のイメージの豊かさは圧巻で,独創的で洗煉されたグロテスク・ファンタジーの魅力を満喫できる.狂気の発作のシーンのナンセンスな言葉遊びじみた台詞の不気味さも印象に残る.無機的なシンセの音を効果的に反復させる音楽の明るさと躍動感は作品の世界とよく調和している.
どろどろとした無意識の世界を描くSFにも関わらず,後味は軽く,爽快な作品となっていた.
とにかく予告編をまず見て欲しい.予告編で引き込まれれば本編を見てもまず後悔しないはずだ.あの映像表現の華麗さには,スクリーンに思わず引き込まれてしまう強力な魔力がある.