大平和登(丸善ライブラリー、1994年)
評価:☆☆☆☆★
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著者は1960年代末からニューヨークに駐在し、映画・演劇のプロデューサーとしてブロードウェイ・ビジネスに関わった人。ブロードウェイのショービジネスに関する著作を何冊も出しているが、この新書は僕がはじめて読んだ彼の著作である。ミュージカルを中心にブロードウェイのショービジネスの世界を、作品紹介だけでなく、制作の面からも立体的に紹介した名著だと思った。特にブロードウェイにおける劇評家の影響力の大きさについて記した章は興味深かった。制作者、作曲家、脚本家、演出家などの緊密な共同作業によって名作が成立する過程を、『ポギーとベス』を例に記述した章も面白い。
莫大な金と人間が動くブロードウェイ・ビジネスの世界は、そこで制作される作品そのもの以上にダイナミックなドラマに満ちているように思える。『42thストリート』初日カーテンコールで悪名高いプロデューサー、メリックが行った「大芝居」(振り付け師のガワー・チャンピオンの死をカーテンコールの際にはじめてスタッフと観客に知らせた)についてもその始終が臨場感ある描写で詳しく記されてる。この演劇的な仕掛けの記述だけで、そのときの興奮の様子が目に浮かぶようである。
ブロードウェイ文化の独自性を多面的に紹介し、そのスケールの大きさを感じさせてくれる充実した内容の入門書だった。