閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

結婚詐欺師

乃南アサ(新潮文庫,2004年)
結婚詐欺師〈上〉 (新潮文庫)
評価:☆☆☆

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結婚詐欺師という主題の選び方がうまい.華麗な口説きのテクニックのディテール描写に感嘆する.人間の弱さ・もろさのスリリングかつ残酷な描写には,快感めいたものを覚える.だまされてしまう女性の容姿の美醜について触れられていなかったのは,作者の優しさ?か.
捜査を担当する刑事の殺伐とした家庭の風景の描写は,身につまされるものがあった.うちの家庭も似たようなものである.
数々のペルソナを演じわける詐欺師は魅力的な小説モデル.

この作家の文章はスピード感があってしかも堅実.深みはないけれど,職人的な巧さがある.