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五反田団 第33回公演
初見の劇団.入場料が1500円というのが素晴らしい.100名ほど収容できる客席は通路まで補助席で埋まる超満員.舞台美術は万年床.巨大な布団がだらしなく一〇畳ほどの広さの平面にだらしくなく敷き詰められている.客席をこの万年床を二方から見下ろすかたちで組まれていた.整理番号順自由席なので,空いていれば一番前の列に座るのが見やすい.後ろの段だと前の客の頭が死角を作る.
つげ義春の夢ネタの漫画の雰囲気を連想させる作品だと思って観ていたら,アフタートークでの作者の話によるとやはり元ネタは自身が観た夢だそうだ.このため,劇中では登場人物はいろいろなところに出かけるのだが,演じる場は最初から最後までずっと同じだらしなく敷かれた巨大布団の上である.夢・幻想ものの定型的な作りの物語とも言えるが,物語自体の独特の軽やかさと浮遊感の表現が洗練されている.夢の世界の非現実な幻想性と瑣末的で散文的な日常性の共存が巧みに表現されていた.役者の「素」の部分をできるだけ引き出そうとしたという演技演出も,脚本の雰囲気と効果的にからんでいた.夢幻的妄想世界の中で細密的にリアルな日常的感覚が奇妙なずれの笑いを生み出す.そのギャグの数々に腹がよじれ,涙が出るほど爆笑する.敢えて説明を加えず観客の前に投げ出したわけのわからなさは,作品にほどよい奥行きと余韻をもたらしていた.坂口安吾の初期ファルスの世界も連想させるような,人を食ったような軽快感の中に奇妙な抒情も感じさせる作品だった.