ポツドール vol.15
http://www.potudo-ru.com/index2.html
- 脚本・演出:三浦大輔
- 照明:伊藤章
- 美術:田中敏恵
- 衣裳:金子千尋
- 出演:米村亮太朗,古澤裕介,鷲尾英彰,美館智範,河西裕介,内田慈,遠藤留奈,白神未央,小島綾乃,小村康浩
- 上演時間:2時間20分
- 劇場:新宿 THEATER/TOPS
- 評価:☆☆☆☆★
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舞台美術は前方に1DKのマンションの一室,その奥にまた別の古びたアパートの一室.二層構造になっていて二階部分にはまた別のマンションとアパートの一室が超写実的に再現されている.これらはそれぞれ登場人物の住居である.
恋愛につきもののロマンチックな幻想をはぎとった上で,複数の男女のリアルな恋愛情景がシニカルに描く.
できる限り客観的に,緻密な演出によって再現された若い年代の恋愛関係の現実は,いかに相手の優位に立つかという権力関係の駆け引きと本能的でエゴイスティクな性的欲望がうずまく殺伐とした場ではある.しかし三浦大輔はこの陳腐で醜悪で滑稽な欲望のゲームの中に,誰もが持つ純粋で根源的で切実な欲求の真実もあることも描き出そうとしているように思う.
冒頭部の仲間内のいじめの描写は悪魔的に秀逸で観ていて胸が締め付けられるよう.自然なダイアローグと演技演出,そして小道具などの細部に至る徹底した「リアル」の追求は超一流の職人藝の域に達している.小道具としての携帯電話の使い方は特に印象深い.なるほど携帯というのはああいう具合に使われるのだなぁと感心する.とにかく芝居の中で携帯電話がよく鳴るのである.
その極度のリアリティへのこだわりのため,役者は演じつつも己自身の存在にも向き合わなければならない,大変きつい芝居である.三浦大輔脚本では,演じること自体が相当マゾ的な行為となってしまう.こうした厳しい要求を受け入れるのだから,役者たちの主宰者三浦の才能への信頼感は相当大きなものなのだろう.男優が性器を見せるのはもちろん,ちゃんと陰茎を勃起させていたのには感嘆してしまった.
ラストシーンの解決の仕方が若干安易に感じられ,そこだけが不満.落ちをつけてまとめる必要はないように思った.ストンと切り落として終わったほうが今日の話ではより効果的であったように思う.
エッセイストの酒井順子が観に来ていた.そういえば三浦大輔の恋愛への醒めた視線は酒井順子の意地悪さと通底するところがある.