閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ひかりごけ2011

三条会のアトリエ公演
三条会ホームページ

三条会の公演を観るのは久々という感じがする。一月にザ・スズナリで『冬物語』の公演があり観に行ったのだが、2/3ほど眠ってしまったため、この演目は見た感じがしない。
ひかりごけ』は三条会の代表作でこれまで演出をかえて何度も上演されている作品だ。私は2007年1月にザ・スズナリで上演されたバージョンを見ている。この公演については劇評サイトワンダーランドに劇評を投稿した。
http://www.wonderlands.jp/archives/12212/
私が初めて見た三条会の舞台でもあった。

今回はこれまでの上演の改訂版というよりは、また一から新たなバージョンを作り直した感じだった。学校机が美術として使われている点は四年前に私がザ・スズナリで上演されたときと同じだが、構成や演出は一新されている。また榊原毅が船長役を演じるバージョンと渡部友一郎が船長役を演じるバージョンの二種類が今回のアトリエ公演では用意された。私が見たのは榊原が船長を演じるバージョンだ。

強烈なデフォルメによって三条会独自の風景を作り出してた前回公演と比べると、今回はかなりオーソドックスで原作に忠実な「ひかりごけ」であるように思った。学校机が前面にバリケードのように乱雑に置かれている。左端には小型の冷蔵庫があり、この冷蔵庫の上も食べられる船員たちの演技の場として使われていた。舞台は奥のほうにむかって徐々に高くなる段となっている。
舞台美術や全体に漂う悲壮な雰囲気には、震災の影響が感じられた。三条会、お前もか、という感じがした。榊原の動きと姿勢、迫力ある台詞回しは歌舞伎役者のように決まっていて全体的には面白かったのだけれど、いつもの三条会公演に比べるとえぐみと活力に乏しく物足りない。
震災の重苦しい状況は演劇の作り手のあいだでも否応なしに強迫観念となって、この三ヶ月に見た芝居には震災を感じさせるものが多かったし、こちらもそういう見方に流されがちだった。しかし今日、三条会の公演を観て、震災の演劇的表象に自分が早くもウンザリしていることに気づいた。我々の多く反応はこの大災害に対してなんて素朴で画一的なのだろうか。

三条会の「ひかりごけ2011」は来年度、ザ・スズナリでも上演される予定だとのこと。どのように変化しているのか楽しみだ。