閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

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北村薫(新潮文庫,1999年)
スキップ (新潮文庫)
評価:☆☆☆☆★

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先日観たキャラメルボックスの舞台を忘れることができず,原作を手に取る.
いくつか削られていたエピソードはあったものの,舞台が原作の空気を実に忠実に,しかも効果的に演劇化していたことに感心する.原作を読んでいくと舞台の場面がはっきりと頭の中で立ち上がってくるのだ.そして作品の描写が想起させる感情も同一のものである.切なくいい作品である.健全すぎて毒がないこうしたまっとうな登場人物が,37歳の中年男のノスタルジーを強烈に刺激する.17歳から突然42歳になった主人公は,高校教師といいう役柄を演じていくことでまた新たに自分の青春時代を濃厚になぞっていく.幼稚で未熟ながらも,今とは違うやりかたで真剣に生きていたかつての自分の姿を思い浮かべる.
原作の小説を読んで舞台の出来のよさをあらためて認識.できればもう一度観たい舞台である.