閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

受取人不明

上映時間 119 分
製作国 韓国
初公開年月 2005/05/14
監督: キム・ギドク Kim Ki-duk
脚本: キム・ギドク Kim Ki-duk
撮影: ソ・ジョンミン Suh Jong-Min
音楽: パク・ホジュン
出演: ヤン・ドングン チャングク
パン・ミンジョン ウノク
キム・ヨンミン ジフム
チョ・ジェヒョン Jo Jae-Hyeon
パン・ウンジン Bang Eun-Jin
ミョン・ゲナム Myeong Gye-nam

  • 評価:☆☆☆☆★

見始めると吸い込まれるように見入ってしまうのだが,キム・ギドクの作品はその強烈すぎるイメージゆえにDVDプレーヤーのスイッチを入れるに躊躇してしまう.『受取人不明』は残酷ではあるが同時に叙情に満ちた力強い悲劇だった.
韓国の米軍基地のすぐそばの町に住む二人の不幸な男女が物語の核となる.女は幼い頃,兄に手製のおもちゃの鉄砲で目を撃たれ,片目を失明する.失明した片目は醜く白濁し,女はその目に大きな劣等感を感じている.基地生活で神経衰弱気味になった若い米兵に誘惑され,彼の恋人となることと引き替えに基地の病院で手術を受け片目を回復する.しかし情緒不安定が進む恋人の米兵との諍いの挙げ句,自らの手で回復した片目をつぶしてまう.男は私生児で彼を溺愛する母親と二人暮らし.父親はかつて基地にいた米兵だが,その父親は妻と子どもを捨てアメリカに帰国.男の母は何度もアメリカに手紙を出すがその手紙はことごとく「受取人不明」で戻ってくる.
この二人は不幸な運命に繰られるまま,淡々と破綻への道のりを歩んでいく.彼らを救うような手だては物語の中に見いだすことができない.運命にいたぶられるまま破滅へと向かっていく二人の姿の潔さは,はっとするほど厳粛で悲壮な美しさに満ちている.