閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

チェンリング

http://changeling.jp/
チェンジリング(2008) CHANGELING

評判通りのずっしりとした見ごたえのある作品だった。扱われている題材は実話だとのこと。
核となるエピソードは、ロサンゼルスのとある母子家庭の子供の誘拐事件である。事件発生後半年たって子供は戻ってきたが、それは全くの別人だった。ミステリー小説のような最初の展開は、強い意志をもって息子を探し続ける母親の行動を軸に、当時のロサンゼルス警察の腐敗、連続誘拐殺人事件が明らかになることによって、その後、意外な広がりを持つ。緊張感のある山場をいくつか設定し、うねるように展開していくドラマの力強さは圧巻だった。練り上げられたストーリー・テリングの手法に大きな満足感を得る。
また役者が子役も含め、みなものすごく達者なのにも感心した。
公権力が、組織防衛のために、個人を押さえ込もうとしたときの凄さがひしひしと伝わってくる。こういった事態は誰にでもありうることなのだ。公権力のみならず、あらゆる組織は、ときに一個人を組織的に抑圧し、葬り去る可能性を持っている。こうした場合、集団の圧倒的な力に対して、有効な対抗手段を個人が見つけることができるのは実際にはごく稀なことであるように違いない。