閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

カネフスキー三部作@早稲田松竹

早稲田松竹■2010/7/10〜2010/7/16上映作品
動くな、死ね、甦れ!(1989)

  • 上映時間:105分
  • 製作国:ロシア
  • 初公開年月:1995/03/
  • 監督:ヴィターリー・カネフスキー
  • 製作:アレクセイ・プルトフ
  • 脚本:ヴィターリー・カネフスキー
  • 撮影:ウラディミール・プリリャコフ、N・ラズトキン
  • 音楽:セルゲイ・パネヴィッチ
  • 出演:パーヴェル・ナザーロフ、ディナーラ・ドルカーロワ、エレーナ・ポポワ
  • 評価:☆☆☆☆☆
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ひとりで生きる(1991) UNE VIE INDEPENDANTE

  • 上映時間:97分
  • 製作国:フランス/ロシア
  • 初公開年月:1995/04/
  • 監督:ヴィターリー・カネフスキー
  • 脚本:ヴィターリー・カネフスキー
  • 撮影:ウラディミール・プリリャコフ
  • 音楽:ボリフ・リチコフ
  • 出演:ディナーラ・ドルカーロワ、パーヴェル・ナザーロフ
  • 評価:☆☆☆☆★
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ぼくら、20世紀の子供たち(1993) NOUS, LES ENFANTS DU XXEME SIECLE

  • 上映時間:84分
  • 製作国:ロシア/フランス
  • 初公開年月:1995/03/
  • 監督:ヴィターリー・カネフスキー
  • 脚本:ヴィターリー・カネフスキー、ヴァルヴァラ・クラシルコワ
  • 音楽:クロード・ヴィラン
  • 出演:パーヴェル・ナザーロフ、ディナーラ・ドルカーロワ
  • 評価:☆☆☆☆
                              • -

ロシアの映画監督、カネフスキーの三本立てを早稲田松竹に観に行った。『動くな、死ね、蘇れ!』、『ひとりで生きる』、『ぼくら20世紀の子供たち』。カネフスキーは『動くな、死ね、蘇れ!』がカンヌ映画祭でカメラ・ドールを受賞し注目された。映画好きの間では大変評判の高い作家だが私が見るのは今回が初めてだった。

三本立てで5時間10分である。今週はけっこう予定が詰まっていて時間の確保が難しかったのだけれど、映画オタクのロシア文学研究者の友人に「気にはなっているのだけれど、時間を作って観に行くべきかな?」と聞くと、「観に行かないなんてありえない!」という返事だったので無理矢理時間を作った。

歌舞伎鑑賞なみの拘束時間だが今回の三本立て@早稲田松竹では10分の入れ替え時間を挟んで予告編なしで上映された。歌舞伎鑑賞と違って場面の一つ一つが濃密で映像の世界に引き込まれるようにして見たので、見終わったあとは頭がじんじんしびれるような感じになった。疲労したけれども、観に行ってよかった。

私は朝一番10時20分の回から、制作年代順に三本見た。『ひとりで生きる』は『動くな、死ね、蘇れ!』の続編であり、『ぼくら20世紀の子供たち』は『ひとりで生きる』のあとに作られたドキュメンタリーで、過去二本の作品のある種の総括となっている。2本目の『ひとりで生きる』からは場内は満員で立ち見も出る盛況だったので、朝から観に行って正解だった。

『動くな、死ね、蘇れ!』と『ひとりで生きる』はスターリン時代、第二次世界大戦直後のシベリアの貧しい炭鉱町が舞台だ。町には収容所もありそこには日本人捕虜も収容されている。貧しく苛酷で日常そのものが収容所であるかのような閉塞感に満ちた日々のなかで、少年はもがき、暴れ、町を抜け出し、この陰鬱さを突き破ろうとする。モノクロの映像で描かれる悲壮な日々の描写はネオレアリズモの映画を思わせる。少年の破壊力と自由な展開はフェリーニゴダール、少年少女の素朴な感情の交流の丁寧な描き方はトリュフォー、叙事詩的な物語の厚みはアンゲロプロスなど、様々なヨーロッパの巨匠の作品のエッセンスが凝縮されたような素晴らしい作品だった。