- 上映時間:124分
- 製作国:ポーランド
- 初公開年月:2014/04/05
- 監督:アンジェイ・ワイダ
- 製作:ミハウ・クフィェチンスキ
- 脚本:ヤヌシュ・グロワツキ
- 撮影:パヴェル・エデルマン
- 出演:ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ、アグニェシュカ・グロホウスカ、マリア・ロザリア・オマジオ
- 映画館:神保町 岩波ホール
- 評価:☆☆☆☆
---------
ワレサ宅をイタリア人女性ジャーナリストが取材に訪れる場面から始まる。インタビューの時期は1980年、ワレサが大規模なストライキを指導し、独立自主管理労働組合《連帯》を組織した直後のようだ。ジャーナリストの質問の受け答えから、1970年の大規模抗議デモでの拘束以後のワレサの労働運動家としての道のりが映し出される。
ワレサと《連帯》については、八〇年代、私が中高生の頃によく目にした記憶があるけれど、この映画を見て私ははじめてその活動内容と歴史的な意義を知った。電気工である彼が優れた弁舌の才とカリスマ性で、ポーランドの現代史を大きく転換させた労働運動の指導者となっていく過程をこの映画で確認することができる。時折挿入される記録映像の使い方が巧みだ。
ワレサとワイダは1990年頃まで政治的同志であったが、《連帯》が分裂した90年以降は政治的に対立していたそうだ。しかしこの見解の相違を超えて、ワイダはポーランド現代史の英雄を作品として残しておくことをワイダは、ポーランドの映画作家としての使命と考えていたとのことだ。当局の度重なる逮捕と脅迫、妨害をも楽天的にやりすごすワレサの精神の強靱さ、労働者を魅了する愛嬌、演説のうまさなどのカリスマ的側面を強調するだけでなく、ワレサの妻の存在をクローズアップすることで、家庭人としてのワレサ像が、労働運動指導者としてのワレサと対比されている。これによってバランスのとれたワレサの姿が提示されていた。
ワレサを弾圧するポーランド政府当局の陰湿さもよく伝えていた。ソ連時代のポーランド社会の重苦しい雰囲気がよくわかる映画になっている。