閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

幕が上がる(2015)

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 青年団主宰の平田オリザによる高校演劇小説と人気アイドルグループのももいろクローバーZという意外な組合せ。まさか青年団がアイドルと結びつくとは、意外なコラボだ。日本の現代演劇界をリードする存在であるとはいえ、平田オリザと彼が主宰する青年団は、演劇ファン以外にはほとんど知られていないと言っていいだろう。ももクロについては、私は十代アイドルにまったく関心がなかったのでその名前をどこかで聞いた事があるくらいしか知らなかった。

 私の知る限り、小劇場ファンのあいだで高校演劇の世界を描いたこの映画の評判は悪くない。志賀廣太郎をはじめ、青年団の俳優がちょろっと画面に出ているのを見つけるのは演劇ファンならでは楽しみ。

 

 私は中学演劇部に入っている中二の娘と見に行った。日曜の午後の回だったが、東武練馬の映画館の入りは半分ほど。ごく真っ当な青春群像映画に仕上がっていた。ももクロの五人のメンバーの個性と『幕が上がる』の設定がうまくマッチしている。演劇部部長となるさおりの視点から見た世界が描き出される。ちょっと泣いたのは『肖像画』の上演場面と緊迫感に満ちた地区大会の場面。いくつかのミスはあったものの、劇中劇の『銀河鉄道の夜』がさまになっているところも。ももクロのメンバーの演劇・映画への取組み、その中で提示される劇中劇の内容の関わりなど多層的な構造を持つ

メタ演劇的面白さもある。しかし登場人物が優等生すぎて屈折がないところが私には物足りない。あまりにも溌剌としすぎている。それがももクロの魅力ではあるのだろうけれど。

 中学演劇部の娘に「どこか面白かった?」と聞くと、「最後のほうで(SPACの)宮城聰さんが出てきたところ」と作品の本筋とは関係ない部分を持ち出してきた。現役の演劇部女子なのでもっとストレートに登場人物に感情移入して感動するかと思えば、面白かったけどなんかしっくり来なかったそうだ。でもその理由はうまく説明できない。彼女の演劇部(中学だけれど全国大会に出場したかなりの強豪校)のありようは、あの映画のなかよりも複雑なようだ。

 もう一度見てみたいと思う。