大学OBの今村昌平の追悼企画として,大学図書館AVホールで代表作をいくつか連続上映している.今村昌平の作品は『ええじゃないか』以降の作品についてはほぼリアルタイムで観ているが,それ以前の作品は未見.
東北の貧農出身の女性の半生を戦前・戦後の時代を通して描く.性を拠り所に,都会の圧倒的孤独の中を生き抜いていく女性のたくましい生き様が,時代世相の象徴として,ねっとりとしたユーモアとともに描かれる.
時代の勢いに押し流されないように,ぐっと精一杯踏ん張って生きていかなければならない時代があったことは,僕の世代では遠い過去の話のように思える.しかし僕の親の世代はまさにそういった荒々しい時代をわたってきたはずだ.僕の両親はともに昭和30年代に,心細い知り合いをたどって山村から都会へ出てきて知り合った.妻の父は集団就職で町にやってきた.さらに僕の祖父母の世代となると,この今村の映画で描かれる大正時代の農村さながらの貧困の中で暮らしてきたのだ.祖母が脳溢血で倒れぼけてしまう前に断片的に聞いた戦前の「村」の生活の話には,今の僕の世代にはおぞましく思えるような「民俗学」なエピソードがいくつか含まれていた.
都会でもがきながら生きていく主人公の姿を見ながら,自分の父母が若かったころを想像する.