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「国際社会」といっても実質的にアメリカのみが世界基準として語られることが多い日本は視野狭窄に陥りがちであり,アメリカ以外にも世界には多様な軸が存在することをもっと認識し,自己像をさらに相対化していく姿勢が有効である,という著者の考え方には同意.これはブザンソンでのフランス語教育の研修に参加して世界各国のフランス語教師と関わる中で僕が認識した問題でもある.この研修ではフランスに関わることの多い僕のような立場でさえ,アメリカの影響力が圧倒的に大きいことがよくわかったのだ.しかし「平等」を民主主義の第一に置くフランスが,著者の書くような理想的社会でないことは,留学生程度の社会経験しかないものでさえ明瞭だ.フランス,特にパリに住んでいると,その貧困の絶望的状況,社会のフラストレーションの大きさは,感じざるを得ない.著書前半の指摘,提案にはおおむね賛成,しかし後半部のフランス社会に対する理想化された記述には疑問を感じる部分が多い.