閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

グエムル:漢江の怪物

http://www.guemuru.com/

寓話的要素の強い怪物映画.随所に喜劇的な仕掛けを効果的に入れて,観客の期待の地平を巧みにはぐらかせる技がさえる.怪物登場の場面など腹がよじれるほど笑った場面がいくつかあった.ストーリーは得たいのしれない怪物に立ち向かう家族愛を軸にしたシンプルな話であるが,シンプルであるだけに展開は力強い.在韓米軍,軍隊,マスコミ,学生,官僚制など韓国社会に対する風刺には,陳腐で類型的な表現をあえて使う屈折ぶりにセンスを感じる.
怪物の誕生の原因の安易さ,怪物の破壊行動への意味づけのなさ,そして怪物の死のあっけなさは,社会の存在する様々な不条理の隠喩となっている.そして個人はこうした不条理に闘いを挑むもの結局は無力を思い知らされることになるのだ.この映画では主人公の肉親二人が冗談のようにあっけなく死んでしまう.娯楽作品的なスピード感ある展開の映画だが,簡単に観客にカタルシスを与えはしない.天災が過ぎ去ったあとの虚脱のような時間に主人公はようやく安らぎを見いだす.
ソン・ガンホの役者力に魅了される.ペ・ドゥナ他,脇の役者もみな達者なひとばかり.