閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

サロメ Salome

http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000011_opera.html

  • 作曲:リヒャルト・シュトラウス R. Strauss
  • 指揮:トーマス・レスナー Thomas Rosner
  • 演出:アウグスト・エファーディング August Everding
  • 美術・衣裳:ヨルク・ツィンマーマン
  • 再演演出:三浦安浩
  • 管弦楽:東京交響楽団
  • 出演:ナターリア・ウシャコワ(サロメ)、ヴォルフガング・シュミット(ヘロデ)、小山由美(ヘロディアス)、ジョン・ヴェーグナー(ヨハナーン)
  • 上演時間:1時間40分
  • 劇場:初台 新国立劇場オペラパレス
  • 満足度:☆☆☆
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ワイルドの『サロメ』は高校時代に読んで当時とても気に入った作品だったのだけど、ワイルドのテクストによる物語そのものよりもむしろビアズリーの挿絵の洗練された装飾性により強く惹かれていたように思う。当時はスペクタクルの類いはほとんど観ていなかったので、戯曲やビアズリの挿絵から舞台をいろいろ想像したものだ。ワイルド版の『サロメ』はこれまで2、3度舞台で見たことがあるはずだけれど、記憶にあまり残っていない。
ワイルド版のテクストに基づくR.シュトラウスの一幕オペラの『サロメ』の舞台を観るのは今回が初めてだった。テレサ・ストラータス演じるサロメの写真でこれまでオペラ版『サロメ』のイメージを膨らませていたのだったけれど。

音楽のパフォーマンス面でのよしあしは僕にはよくわからないのだけど(船酔いしたようなうねうねと続く音楽がうっとうしく、かつオケが耳障りなほどうるさく感じた)、演劇的には僕にはまったく受け入れがたい『サロメ』でがっかりしてしまった。アウグスト・エファーディング演出によるこの『サロメ』は新国立では4度目の上演だとのことだけれど、いったいどこに再演を重ねるほどの魅力があるのか僕にはわからない。歌手に負担をかけない演出ではあると思ったけれど。歌っている人物以外は基本的にぼーっと突っ立っている「歌舞伎」調の演技だった。照明は終始暗くて陰鬱。中央前方にドーンと置かれた巨大なマンホールが、預言者ヨハナーンが幽閉されている井戸だった。彼の登場シーン以外は、この巨大な「井戸」は半透明のふたで閉じられている。サロメに恋をしていた若い兵士、ナラボートは自殺してしまうのだけれど、あの唐突な死に方ではまったく犬死同然だ。東洋的エロスと退廃を記号的に示す美術と衣裳はいずれも中途半端に思え、全般に芸に乏しい演出だった。

オペラ歌手は歌が第一とはいえ、ユダヤ一の美女であるはずのサロメを演じたナターリア・ウシャコワ、超美男子であるはずのヨハナーン役のジョン・ヴェーグナーとも、若々しさの感じられない中年女性と中年男性で、そのドタドタとした有り様を見て「美しい」という形容詞を付けることができるようになるにはかなりの葛藤が必要となる。写真ではどちらもかなりの美女、美男子なのだけど。終盤では「七つのヴェールの踊り」をサロメがストリップさながらに踊らなくてはならないのだけれど、なんか無残な感じがして見ていられなかった。
歌劇「サロメ」に関しては、歌といっても美しいアリアがあるってわけでもないので、歌唱力は二の次、容姿第一のキャスティングをしてほしいと個人的には思う。