閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

オルエットの方へ

Du côté d'Orouët
http://www.rozier.jp/movie/orouet.html
1969-70年/フランス/161分/ 35mm /カラー/1:1.37

  • 脚本・台詞:ジャック・ロジエ
  • 助監督:ジャン=フランソワ・ステヴナン
  • 撮影:コラン・ムニエ
  • 録音:ルネ・カデュー
  • 編集:ジャック・ロジエ、オディール・ファイヨ
  • 音楽:ゴング/デイヴィッド・アレン、ジリ・スマイス
  • 出演:ベルナール・メネズ(ジルベール)、ダニエル・クロワジ(ジョエル)、フランソワーズ・ゲガン(カリーン)、キャロリーヌ・カルティエ(キャロリーヌ)
  • 映画館:渋谷 ユーロスペース
  • 評価:☆☆☆☆★
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三人の若い女性と一人の男性のヴァカンスの一ヶ月が、あたかも記録映像を見ているかのような自然さで描き出される。ヴァカンスの場所はフランス大西洋岸、ヴァンデ地方の海岸。時期はヴァカンスとしては少々時期はずれの九月である。かしましい三人娘が人気のないリゾート地で遅いヴァカンスを気ままに楽しんでいると、そこに三人組の一人、ジョエルが働く会社の上司である男性、ジルベールがやってくる。三人+一人は一緒にヴァカンスを過ごすことになったけれど、どんくさくて間の悪いジルベールは三人の女性にからかわれてばかり。それでも徐々に気心がしれ、彼は彼なりにこのヴァカンスを楽しんでいるように見えた。ヨットを操る地元のハンサムな青年との出会いなどもある。解放感に満ちたヴァカンスの喜び、退屈、友人と長期を一緒に過ごす間に必ず起こるであろう感情のすれ違いなどが生き生きと描き出され、観客はあたかも彼女たちとヴァカンスをいっしょに体験しているような気分を味わうことができるだろう。
オジエの映画では、ヴァカンスは青春時代そのものの優れた暗喩になっている。
楽しいヴァカンスには必ず終わりがある。ヴァカンスの終わりの切なさの表現も上手い。ジルベールは結局ふられてしまい、一人寂しくヴァカンス地を後にする。もてない男のもてない話が喜劇となってしまうところがもてない男の悲劇だ。ずうずうしくて、空気読めない男のジルベールが、自分が愛されていないということは実は敏感に感じ取っていたというのが悲痛だった。心ある男性観客はあの場面で涙するはずだ。