閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

紅き深爪」

紅き深爪公式サイト
風琴工房

  • 作・演出:詩森ろば
  • 出演:浅野千鶴(味わい堂々)、葛木英(ehon)、園田裕樹(はらぺこペンギン!)、佐野功、大塚あかり(IVY アイビィーカンパニー)、横尾宏美(シアターノーチラス)
  • 劇場:渋谷 ギャラリーLE DECO
  • 上演時間:1時間
  • 評価:☆☆☆
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劇団初見。『紅き深爪』は児童虐待についての物語である。
舞台は病室。カーテンで仕切られた奥では50代の母親が意識不明の状態で横になっている。この病室で母親を見舞う娘二人がかつての虐待の被害者だった。姉は奔放で酒に溺れている。おねえことばを話す男性(ただし同性愛者ではない)と結婚し、妊娠中。妹は姉とは対照的に地味で真面目そうな感じ。彼女も既婚。夫は無口で不器用な感じ。小4ぐらいの娘が一人いる。
姉妹の夫、そして娘との関わりのなかで、姉妹がかつて母親による虐待の被害者であることが明らかになっていく。妹は自分の娘への虐待を行うようになっていた。

脚本も演技演出も作り事めいていて、テレビの再現ドラマのような雰囲気の芝居だなと思いながら見ていた。登場人物は皆情緒不安定だが、その表現は定型的で、どことなく自己陶酔しているような印象がある。台詞は修辞的、説明的で、リアリズムからは遠い。残念ながら私の好みではなかった。

しばしば目にする説明であるが、虐待の連鎖ということ自体、私には加害者の罪悪感を軽減するための方便に思え、説得力を感じない。虐待という現象を説明するにはあまりにも分かりやすく、安直であるように思える。もっともこうした説明を受け入れることで、児童虐待が実際に解決の方向に向かっているのであれば、たとえ虚構ではあってもかまわないのだけれど。