マームとジプシー
LEM-on/RE:mum-ON!! : マームとジプシー
- 原案:梶井基次郎『檸檬』他
- 作・演出:藤田貴大
- 舞台監督:森山香緒梨
- 照明:吉成陽子
- 音響:角田里枝
- 出演:伊野香織 荻原綾 尾野島慎太朗 川崎ゆり子 斎藤章子 高山玲子 成田亜佑美 波佐谷聡 召田実子 吉田聡子
- 会場:京都 元・立誠小学校
- 上演時間:75分
- 評価:☆☆☆☆
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廃校となった小学校という場を独自な表現様式の背景として効果的に利用したノスタルジーのテーマパークのような舞台だった。
ダンス、音楽、反復されるセリフと場面、そして学校という空間の特性をフル活用した五感に訴える多声的スペクタクル。廃校となった小学校校舎は古くて風格のあるものだった。記憶の廃墟のような趣がある空間だった。
最初と最後は、マームとジプシー様式。いくつかの短い回想的場面が何度も繰り返し、執拗に演じられる。反復はそれ自体音楽的だし、かなり激しい舞踊的な動きも取り入れられている。セリフはほとんど悲鳴のように観客に向かって訴えかけられる。俳優が疲労していく過程をさらけ出す演出。梶井基次郎の「檸檬」から受けた感想を、自分たちの演劇様式で語り直しているような感じがした。「檸檬」の原作の取り込み方は、劇中の表現とシンクロする部分はあるもののとってつけたような感じもあり。ノスタルジーのイメージはステレオタイプでリアリティに乏しいが、それは戦略的なものだろう。小さな薄片を何層にも重ね合わして組み立てられた精巧なコラージュを連想させる複雑な構成には感嘆する。
職員室私は各教室で同時進行的に行われるパフォーマンスを観客が浮遊しながら見る真ん中のパートはとても印象的だった。子供たちの亡霊が各教室に現れ、延々と過去の情景を繰り返し再現しつづけているような感じがした。記憶の牢獄のような。
私は昼の部を観た。夜の校内で演じられる夜の部はさぞかし幻想的なものであったと思う。しかし昼の部も悪くない。ちょうど小学校の下校時間である4時前に終演となる。春の西日が柔らかく、校舎内にさしこむ時刻だ。
観客の女性にオシャレで可愛い人が多い。丸尾末広『少女椿』から抜け出たような美女がいた。