閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

クラウド・アトラス CLOUD ATLAS

 最近はこの手のSF娯楽映画への関心が薄れているのだけれど、ペ・ドゥナが出演している映画ということで見に行った。19世紀から文明崩壊後の未来までを舞台とする6つのエピソードを分断し、再構成して、3時間弱の壮大な叙事詩的ファンタジーを描き出す。伏線を散りばめたうねるような展開はスリリングで、3時間の長さを感じなかった。一人の役者が別のエピソードで複数の役柄を特殊メイクによって演じ分けるという歌舞伎っぽい趣向も面白い。

各エピソードの人物や内容はゆるやかに連鎖している。巨大な圧力、不条理な暴力に対抗し、そこから必死で逃れようとする姿勢は、各エピソードの主要人物に共通した性質となっている。類型的な描写や全篇に漂うヒューマニズムの未成熟は気になったけれど、エピソードのダイナミックな連鎖を楽しんで見ることができた。ペ・ドゥナが重要な役を演じ、存在感を示していたのが嬉しい。いい役柄があたってよかった。