長谷川伸 没後50年 「大衆文芸」の父・長谷川伸と股旅映画の世界
映画館:池袋 新文芸座
いれずみ半太郎(1963)
- 上映時間:90分
- 製作国:日本
- 初公開年月:1963/02/10
- 監督:マキノ雅弘
- 原作:長谷川伸
- 脚本:野上竜雄
- 撮影:吉田貞次
- 音楽:斎藤一郎
- 出演:大川橋蔵、長門裕之、丘さとみ、河原崎長一郎
- 評価:☆☆☆☆★
一本刀土俵入(1957)
- 上映時間:83分
- 製作国:日本
- 初公開年月:1957/10/13
- 監督:マキノ雅弘
- 製作:藤本真澄 、宇佐美仁
- 原作:長谷川伸
- 脚本:井手雅人
- 撮影:飯村正
- 美術: 清水喜代志、北猛夫
- 音楽:仁木他喜雄
- 出演: 加東大介、越路吹雪
- 評価:☆☆☆☆★
いずれも歌舞伎で見たことのある作品だが、映画版を見るのはこれがはじめてだった。二本ともとても楽しんで見ることができた。役者がいい。『いれずみ半太郎』では大川橋蔵にすがるほとんど疫病神といってもいいような旅路の足手まといの女を演じた丘さとみの芝居がすばらしい。不器用な生き様の女がすがりつく切実さの表現、その求心力に半太郎は応えずにはいられない。大事な局面を結局のところ丁半博打で切り抜けようとする半太郎の愚かさもいい。芝居と博打は相性がいい。中世の芝居にも骰子博打の場面が頻出する。この問題については考察があったはず。あとで確認しておこう。
『一本刀土俵入』も『いれずみ半太郎』に劣らずよかった。前半部の加東大介の間抜け振りがもたらす喜劇的調子と後半のハードボイルド風の対比が効果的に決まっている。かつての恩人、お蔦をたずねる茂兵衛だが、お蔦が「覚えていない」という台詞を繰り返す箇所には胸をえぐられるような感覚を味わった。『一本刀土俵入』は劇中音楽の使い方も印象的、効果的だった。