閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

長谷川伸原作、マキノ雅弘監督『いれずみ半太郎』『一本刀土俵入』

長谷川伸 没後50年 「大衆文芸」の父・長谷川伸と股旅映画の世界

映画館:池袋 新文芸座

いれずみ半太郎(1963)

一本刀土俵入(1957)

いずれも歌舞伎で見たことのある作品だが、映画版を見るのはこれがはじめてだった。二本ともとても楽しんで見ることができた。役者がいい。『いれずみ半太郎』では大川橋蔵にすがるほとんど疫病神といってもいいような旅路の足手まといの女を演じた丘さとみの芝居がすばらしい。不器用な生き様の女がすがりつく切実さの表現、その求心力に半太郎は応えずにはいられない。大事な局面を結局のところ丁半博打で切り抜けようとする半太郎の愚かさもいい。芝居と博打は相性がいい。中世の芝居にも骰子博打の場面が頻出する。この問題については考察があったはず。あとで確認しておこう。

『一本刀土俵入』も『いれずみ半太郎』に劣らずよかった。前半部の加東大介の間抜け振りがもたらす喜劇的調子と後半のハードボイルド風の対比が効果的に決まっている。かつての恩人、お蔦をたずねる茂兵衛だが、お蔦が「覚えていない」という台詞を繰り返す箇所には胸をえぐられるような感覚を味わった。『一本刀土俵入』は劇中音楽の使い方も印象的、効果的だった。