最後のマイ・ウェイ CLOCLO MY WAY
- 上映時間:149分
- 製作国:フランス
- 初公開年月:2013/07/20
- 監督: フローラン・エミリオ・シリ
- 製作: シリル・コルボー=ジュスタン、ジャン=バティスト・デュポン
- 脚本: フローラン・エミリオ・シリ、ジュリアン・ラプノー
- 撮影: ジョヴァンニ・フィオーレ・コルテラッチ
- 美術: フィリップ・シーフル
- 衣装: ミミ・レンピツカ
- 編集: オリヴィエ・ガジャン
- 音楽: アレクサンドル・デプラ
- 出演: ジェレミー・レニエ、ブノワ・マジメル、モニカ・スカッティーニ、サブリナ・セヴク、アナ・ジラルド、マルク・バルベ、ジョセフィーヌ・ジャピ
- 映画館:高田馬場 早稲田松竹
- 評価:☆☆☆☆
昨年夏に公開されて見損ねていた映画。シナトラの名曲、日本でも美空ひばりなどが歌っていて非常によく知られている《マイ・ウェイ》の原曲が、フランス語のポップスであることを知ったのは10年ほど前だった。フランス語の授業の準備で、授業で聞かせるシャンソンを選んでいるときに知った。フランス語の原曲のタイトルは《Comme d'habitude》、直訳すると《いつものように》となる。フランス語原曲の歌詞内容は、《マイ・ウェイ》の英語の歌詞とは全く異なっていて、おそらくクロード・フランソワの分身である男性が、一緒に住んでいる恋人との気持ちのすれ違いをうじうじと歌っている。《Comme d'habitude》(コム・ダビチュード)というルフランがしつこすぎるように思ったが、その鬱屈した歌詞の内容が興味深く、youtubeでクロード・フランソワのクリップをいくつか集め、実際に授業でも紹介したことがある。
http://www.youtube.com/watch?v=EQbybO_ReiM
アイドルというには少々野暮ったい風貌、チープでキッチュなファッション性、通俗的でわかりやすいメロディー等、クロード・フランソワはフランスの60-70年代のポップスのダサさを象徴する存在のように感じたのだけれど、その突き抜けた通俗性に魅力も感じていた。39歳のときに感電死するという死に方も衝撃的で印象に残った。
フランスの伝記映画には好きなものがいくつかあるが、この映画もよくできていた。ただし父親の確執のエピソードは、フランソワのエキセントリックな人格形成のポイントとして提示したかったところだろうが、監督が意図したほどうまく機能していなかった。
スターとなったフランソワが、その性格の異常さをどんどんエスカレートさせ、孤独に陥っていくさまの展開がとてもいい。猜疑心が強く、傲慢で、エゴイストであるけれど、その寂しさとむき出しの弱さゆえに人に愛される。ずっとハイテンションで突っ走り、最後はまさに電球がショートするかのように、突然燃え尽きてしまう。彼の生き様のドライブ感が作品でも表現されていて、二時間を越える上映時間を長く感じさせない。アーティストの行き方の王道をいく破滅的な人生の醍醐味を味わうことのできる作品だった。
当たり前なのだけれど、フランソワ役のジェリミー・レニエ、フランス・ギャル役のジョゼフィーヌ・ジャピなど、本物とそっくりの雰囲気をメイクと仕草で作っていて、芝居も巧い。敏腕マネージャー役の俳優が味があっていいなあ、と思って見ていたのだが、演じてるのはブノワ・マジメルだった。ブロンドで坊ちゃん顔のイメージが強かったので、映画を見ているときはわからなかった。フランソワの最初の妻、ジャネットを演じたモード・ジュレもとても可愛らしい。