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閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

トム・アット・ザ・ファーム

トム・アット・ザ・ファーム(2013)TOM A LA FERME

  • 上映時間:102分
  • 製作国:カナダ/フランス
  • 初公開年月:2014/10/25
  • 監督: グザヴィエ・ドラン 
  • 原作戯曲: ミシェル・マルク・ブシャール 
  • 脚本: グザヴィエ・ドラン、ミシェル・マルク・ブシャール 
  • 撮影: アンドレ・トュルパン 
  • 美術: コロンブ・ラビ 
  • 編集: グザヴィエ・ドラン 
  • 音楽: ガブリエル・ヤレド 
  • 出演: グザヴィエ・ドラン(トム)、ピエール=イヴ・カルディナル(フランシス)、エヴリーヌ・ブロシュ(サラ)、リズ・ロワ(アガット)
  • 映画館:ヒューマントラストシネマ有楽町
  • 評価:☆☆☆☆

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 ケベックのグザヴィエ・ドラン監督・主演作品。ドランはゲイの美青年だ。まだ二十台の若さだがその洗練された映像センスで注目されている。

 原作戯曲及び映画脚本はやはりケベックのミシェル=マルク・ブシャール。現代のケベックのみならず、フランス語圏を代表する劇作家と言っていい。彼の戯曲はフランス語圏のみならず、英語圏、スペイン語圏でも翻訳され上演されている。また日本では劇団スタジオライフが、ブシャールの『LILIES』と『孤児のミューズたち』を上演し、前者は劇団の重要なレパートリーとして再演を重ねている。

 急死した恋人の実家の農場を訪ねた美しい青年トムが、頭のおかしい恋人の兄に取り込まれ、支配され、囚われてしまうという話。トムは同性愛者だが、ケベックの田舎の農場では同性愛はタブーとなっている。母親は自分の次男が同性愛者であったことを知らず、息子には女の恋人がいたと信じている。トムの恋人の兄のフランシスは、この嘘を演じ続けるようにトムに暴力的なやりかたで強要する。

 トムはフランスシスの強制に逆らうことができない。葬儀後も農場で過ごすなかで、むしろフランシスとのあいだに奇妙な主従関係あるいは恋愛関係が成立し、農場から逃げ出すことができずにいる。

 象徴的・詩的な美しさに満ちた奇妙な味わいのホラー映画。ゾワゾワとした不安感に徐々に侵食される。濃厚な恋愛映画だった前作、『わたしはロランス』とは雰囲気が大きく異なる。倒錯的な愛がどちらも主題となっているが、今作では殺伐とした暴力と絶望、閉塞感が満ちている。唯一、トムとフランシスのダンスの場面に抒情があるが、その怪しい甘美もすぐに断ち切られてしまう。

 ケベック出身の作家ということでドランを応援したいのだけれど、私はこのひとの作品が好みではない。耽美的で洗練された映像へのこだわりは、題材のファッション性の高さはカラックスを連想させるところがある。私はカラックスも苦手な映画監督だ。優れた映画作家であることはわかるのだけれど。

 『トム・アット・ザ・ファーム』は映画を見る前に、フランス語の原作戯曲も読んだ。戯曲と映画は全然印象が異なっていた。戯曲ではトムの独白の場が多いが、映画では全てカットされている。戯曲をちゃんと読めていなかった可能性が高い。時間を見つけて再読したい。