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閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

KJプラニング『ザ・モニュメント 記念碑』

演劇

http://themonument14.webnode.jp/
The Monument by Colleen Wagner
企画・製作: KJプランニングス
作:コリーン・ワグナー
翻訳:神保良介
演出:川口典成
出演:西田夏菜子、神保良介
劇場:高田馬場 プロトシアター
上演時間:2時間
評価:☆☆☆☆
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カナダの劇作家の二人芝居。先月、新国立劇場で見たカナダの劇作家、モーリス・パニッチの『ご臨終』が思いの外面白かった。同じカナダの現代作家の二人芝居で、1995年にカナダでもっとも権威ある文学賞をとった作品ということで興味を引かれ、チケットを予約した。出演者の一人が羽衣の常連メンバーである西田夏菜子だったのも、チケットを予約した理由。

5メートル四方ぐらいの広さの場所が、紐によって結界のように区切られていて、そこが中心となる演技スペースとなる。その「結界」の外側は雑然とガラクタが散らばっている。舞台奥には20インチほどの大きさの液晶モニタが設置され、上演前には陽気で脳天気な音楽のクリップが繰り返し流れていた。

作品はこの脳天気な音楽クリップとは全く対照的なひたすら重苦しいものだった。

舞台はとある国である。どの国でいつのことなのかは明示されない。元兵士が電気椅子にくくられ処刑されようとしている。彼の独白から、彼が戦争中に数多くの女たちを森に連れて行き、そこで強姦してから殺害するということを繰り返したことがわかる。ひどい振るまいではあるが、戦争のエピソードとしてはありふれたものといえるかもしれない。この種の蛮行については、戦争についての語りのなかで、比較的よく言及されるように思う。彼は戦争犯罪者として裁かれ、処刑されることになったようだ。
処刑の直前に女が一人側にやって来た。女は兵士が自分の言うことを何でも聞くと約束するのであれば、兵士を助けてやることができると言う。兵士は同意し、処刑椅子から解放される。兵士は女の家に連れて行かれるが、その庭先で鎖につながれ、犬のような生活を強いられる。耳をハサミで切り取られ、足に重い石を落としてつぶすように命じられる。命こそ助かったが、兵士は女のなすがまま、自由を奪われ虐待を受け続ける。
女が兵士に命じた最後の仕事は、その兵士が戦争中に女を強姦し、殺害した森へ行き、彼が殺した女の死体を掘り起こすことだった。男は記憶を辿り、自分が死体を埋めた場所へとやってくる。そして次々と死体を掘り起こす。
男が強姦し、殺した女のなかには、女の娘がいた。娘の死体を見つけた女は、その死体を抱きしめ感情を爆発させた。女は男に死体を一つ一つ並べ、女の死体によってモニュメントを作ることを命じる。そして女の一人一人について記憶を辿り、その様子を語ることを男に命じる。男は、女の命じられるまま死体を並べ、その一つ一つの殺害の記憶を呼び起こし、語りはじめる。その男を女は後ろから思い切りシャベルで殴りつけ、男は卒倒する。
しかし男は死んではいなかった。意識を回復した男は自分の自由を奪った上で、命を弄ぶ女の振るまいは、自分がかつて女たちにしたことと同じだと言って、女を嘲る。女は反駁できない。女は男を解放する。しかし男はその場から動くことはできない。


筋が一直線にまっすぐ進行していくシンプルな物語だ。単調な展開は時間がたつにつれ、劇場空間を重苦しい空気でどんどん満たしていく。息苦しくなるような緊張感をほぼ素舞台と言っていい荒涼とした空間で、劇音楽も使わず、ほぼ俳優の身体だけで維持できたというのは、賞賛に値する。戦争の悲劇の物語としては陳腐で空々しい違和感を最初のうちは感じていたのだけれど、進行するについて二人の俳優の緊迫感あふれるやりとりのなかに取り込まれてしまった。演出のギミックは奇をてらったところがない。
背景に置かれた液晶モニタに、黒地に白い文字でト書き的記述が映し出されるのが効果的だった。また最後のろうそくの光だけの場面も心をぎゅっとつかまれるような美しさだった。終演後、大きく息を吐いた。