閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

クライング・ゲーム

ビデオでの観賞.実にとらえ所のない奇妙な味わいと設定のお話.IRAの武装組織と元クリケット選手の黒人イギリス兵,武装組織のメンバーながら誘拐した黒人兵と意気投合する心優しきアイルランド人,ロンドンに住む黒人兵の恋人のおかま,といった一つのお話の中では結びつき難い非現実的な組み合わせの中,話が進む.結局は黒人兵が監禁中に話した「サソリとカエルの寓話」につきる.行く通りにも解釈可能に思えるこの寓話が通奏低音のようにこの荒唐無稽の物語をやさしく支えている.
金槌のサソリが川の前にやってきた.サソリは川を渡りたいと思った.そこへ泳ぎの得意なカエルがやってきた.サソリはカエルに言った.
「俺をおぶって向こう岸まで連れていってくれよ」
カエルは答える.
「いやだよ.だってお前は俺を刺すに違いないだろうから」
「安心しろ.お前を刺してしまうと,金槌の俺までおぼれてしまうじゃないか」
カエルはもっともだと思い,サソリを背負って川に入った.川の中盤に来た頃にカエルは背中に激痛を感じた.「うう,なんでお前はおぼれることがわかっているのに俺を刺したりするんだ」
そういいながらカエルはサソリを背負ったままずぶずぶと水の中に沈んでいく.サソリは哀しそうな声で言った.
「すまんな.それがおれの性 (nature)ってやつなんだ」