閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ロング・エンゲージメント

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  • 場所:東武練馬 ワーナーマイカル板橋
  • 評価:☆☆☆☆
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第一次世界大戦の北フランスの激戦場で行方不明になった幼なじみの恋人の探索するお話.ブルターニュに残されたフィアンセは,絶望的な状況の中,「彼はまだ死んでいない」という直感を信じて探索の旅に出る.
ミステリー仕立てのオーソドックスなロマンスだが,ジャン=ピエール・ジュネ特有のえぐみとグロテスクな映像美,主演のオドレイ・トトゥのいびつなコケットリーが作品に独特の味わいを与えている.第一次世界大戦の戦場の光景の悪趣味とまでいえるリアリズムはまともに直視できないほどのえぐみがあった.こうした無慈悲な映像がブルターニュの風景と最後の出会いの場面の美しさと絶妙のコントラストをなしているのではあるが.
音楽もオーソドックスなものだが効果的に映画のストーリーの情感を装飾している.ラストのクライマックスは美しいけれども,驚きと盛り上がりに欠け若干不満が残る.
「もし○○なら,彼は生きている」といった願掛けが何カ所かに出てくる.素朴,軽妙ながらその言葉の後ろ側にある切実な祈りの感情にぐっとくる.
フランスでは大ヒットだったというが,日本では宣伝も地味で,いまひとつ盛り上がらず.文化辺境地である板橋の映画館では,平日昼間とはいえ,観客は僕を含め二人だけ.贅沢な環境での鑑賞となったわけだが,やはりこんな映画に人が入らないのは寂しい.