http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=144590
- 評価:☆☆☆☆★
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先日読んだばかりの長部日出雄の小説とは無関係.映画のほうが先なのでむしろ長部のほうが映画にインスピレーションを受けて,同タイトルの小説を書いたのかもしれない.
荒々しく寂寥な津軽の海辺にたたずむ流木のバラックの貧しい部落が舞台.そこに東京から男女が流れ落ちてくるところから物語りははじめる.男はやくざもので,追われている身.ちんぴら特有のすさんだ雰囲気を持っているが心の性根までは腐りきっていない.寒村で暇をもてあまし部落を徘徊しているときに出会った盲目の少女と蜆とりの老人との交流をきっかけに男は心の平安をこの荒涼たる土地の中で徐々に見いだしていく.
ありがちの話であるが,男と盲目の少女の恋愛の素朴さ,ぎごちなさの表現が心地よい.そして詩的な映像に満ちている.音楽の使用はむしろ控えめだが,その抑制された音楽の使用が画面の詩情を最大限にもり立てている.時折挿入される盲目の芸人,ごぜと津軽の部落をベンシャーン風に描いた絵も印象的.DVDではなくできれば大画面で観たかった.
同行してきた女に村に置き去りにされたあと,しじみとりの老人と盲目の少女とともに男は本当につかの間の幸福感に満ちた時間を過ごす.しかしやくざ男にハッピーエンドはない.この幸福な時間はたちまち破られてしまうのである.ラストのあれる海をバックにした津軽三味線の演奏のシーンの叙情性はアンゲロプロスの映像を連想させる.
素朴な物語を抑制された演出で描く,美しいイメージに満ちた秀作.