閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

入院対策雑学ノート

ソルボンヌK子ダイヤモンド社、2000年)
入院対策雑学ノート―いつやってくるかわからない病院での暮らしを100倍楽しむ本
評価:☆☆☆☆

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著者は20歳のころ、くも膜下出血で2ヶ月、くも膜下出血手術時の輸血による血清肝炎で4ヶ月間の入院経験を持つ。
一生の間で出生時と臨終時しか入院の経験のない幸運な人間の割合はどのくらいのものだろう?僕は36の歳までそうだったのだけど、36の晩夏にいきなり心筋梗塞という強烈な病でパリの病院で入院デビューをした。いきなりCCUで全身常時監視状態だった。入院した病院はフランスでも超豪華な一流病院で、設備も医師もスタッフも素晴らしかったのだが、(記憶のない出生児を除けば)初めての入院体験の不安はすさまじく大きいものだった。また当然周りはフランス語。医療用語は耳慣れない言葉が多いし、こちらは極度の緊張状態にあるし、コミュニケーションにもかなり問題があった。スタッフのケアは今思うと非常に細やかでレベルの高いものだったのだが、ヒステリー症状を起こしてわめきちらしたことが2,3度あった。スタッフが持ってきた錠剤を「こんなわけのわからん薬を飲めるか!」といって床に投げつけたりね。とにかく入院は人を恐怖させる。慣れても別に楽しいもんではなかろうし。入院しなきゃ治らない病気もあるけれど、入院したために一気にストレスで衰弱する人もおそらくかなり多いはずだ。
入院生活の非日常の詳細を、客観的にコミカルに描写した佳編。入院経験のある人(そして現在は入院していない人)は楽しんで読める内容。著者の病状はかなり深刻なものであったはずなのに、深刻ナルシズムにひたることなく、淡々と率直に病院生活の不条理が書かれている。