閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

メゾン・ド・ヒミコ

http://www.himiko-movie.com/

  • 場所:新宿 武蔵野館
  • 評価:☆☆☆☆
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静謐で暖かい雰囲気の映画。人の心理や言動の曖昧さや自身でもコントロールできない不可解さを叙情的に描く傑作。役者の持ち味を最大限引き出した丁寧な演出が素晴らしい。ゲイの老人ホームというわざとらしくなりがちな仕掛けの使い方も抑制が効いている。
眉間にしわの怖い美女、柴咲コウの演技に魅了される。田中民、オダギリジョー等、みんなよかったのだけど。柴咲コウの瞳の力強さと美しさ。ぎゅっとかみしめた唇が示す芯の強さ。彼女独自の表現、空気が実によく作品の中で引き出されていた。クラブでからんできた中年男へ怒りを爆発させるシーンで、柴咲によって表現されていた言葉にしがたい思いに、感情移入して涙がにじむ。あのような怒りは正当であり美しい。そして父親との最後の対決シーンでの父親の台詞への反応。
人の心の不安定さがこの映画では優しく肯定的に表現されている。人は自分自身に振り回され、その挙げ句徹底的に傷ついてしまうこともある。意志的に主体的に動くことができない、そういった人生の一局面を、叙情的なタッチで映像化した作品だと思った。
柴咲コウの濡れ場あり。ヌードはないけれど、犬童一心は性交シーンでエロチックな画面を作るのがうまい、と思う。
細野晴臣の音楽もいい。効果的に使われている。