閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

心中天網島:河庄(しんじゅうてんのあみじま・かわしょう)

紀伊国屋小春を演じる予定だった中村雀右衛門が病気のためお休み。代役は中村翫雀。ふっくらとしておばさんぽい小春となった。いままでぴんとこなかった上方和事の面白さ、楽しみ方が今日の演目でようやくわかったような気がした。なよなよとした自分勝手な色男。色男でありながら、生来の喜劇性・愛らしさを有している。今日の雁治郎演じる治兵衛のナサケナさのもたらす滑稽味は、ふらふらと軸の定まらぬまま流されて、事態の急激な変化にはあわてふためき混乱する己自身の情けなさを重ねてしまう。二人子供を抱えたさえない中年男が、場末の遊女と恋におち、挙げ句の果ては心中騒ぎ。別れ際の未練たらたらの心情のこっけいさと切なさ、うーん、よくわかるなあ。
中盤義太夫で語られる場面は冗長に感じられたけれど、幼い頃テレビで見た藤山寛美松竹新喜劇の世界を想起させる、上方和事のつっころばしのキャラクターの持つ喜劇性を楽しむ。