閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

フランス人 この奇妙な人たち

ポリー・プラット著/桜内篤子訳(TBSブリタニカ,1998年)
フランス人この奇妙な人たち
評価:☆☆☆☆

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古本屋で見かけて衝動買い.
先週,二年三ヶ月ぶりにパリに行って,二週間滞在してきた.久しぶりのパリでの滞在の感想は「おれ,やっぱりフランスってあんまり好きじゃないなぁ」.今回の滞在では特に嫌な思いをしたわけではないけれど,フランス社会のうっとうしい面を特に再確認したという感じである.
この本の著者はパリ在住のアメリカ人.外国からフランスに赴任する企業幹部とその配偶者を対象とした異文化セミナーを主催,といかにもうさんくさい感じはするが,著作の中で触れられているフランス人とフランス社会の描写は,学生として合計2年ほどしかパリに滞在したことのない僕にも,経験的に首肯できる事柄ばかりである.日米仏と互いに似ているところと異なるところはあるのだが,ビジネス上の習慣や家族関係についての考え方は,日本はフランスよりもむしろアメリカに近い部分が多いように思える.
この本の著者の姿勢で共感できるところは,米国とは異なるフランスの習慣(時にきわめて不合理な)を,一方的に断罪したり,嘲笑したりすることをせず,異なった文化習慣の背景について客観的な説明を付し,公平な視点で語ることを心掛けているところである.僕もこのたびちょっとフランスに行っただけで,フランス・システムの効率の悪さと無愛想な対応にいらいらし不満とフラストレーションがたまってしまうのだけれども,この著作にとりあげられているようなフランス人の困った局面にある人に対する無償の親切心という特性の恩恵を受けたこともあることも思いだし,フランス(パリ)についてとかく否定的面ばかり見がちな自分の姿勢を反省した.この前の滞在でも,国立図書館の利用者カード登録時の面接官のアドバイス,劇場のスタッフの機転など,フランス(パリ)ならではだなぁと思えるようなきわめて心地よい応対もあったのだ.またフランスの地方に旅行したときに感じるフランス人の素朴で率直なホスピタリティの心地よさ.
フランスという異文化を受容し理解していく上での実際的な心構えやこつがこの本には書かれている.彼の地に赴任予定の会社員などは特に,文化衝突による余計なフラストレーションをためてイライラすることを避けるためにも,この本の内容は役に立つように思える.