閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

フランドル

http://www.flandres-movie.com/

上映時間 91分
製作国 フランス
初公開年月 2007/04/28
監督: ブリュノ・デュモン
脚本: ブリュノ・デュモン
撮影: イヴ・カペ  
出演: アデライード・ルルー、サミュエル・ボワダン、アンリ・クレテル

昨年のカンヌ映画祭グランプリ受賞作品。音楽を一切使わない、厳格な雰囲気の作品だった。
北フランス、ベルギー国境の倦怠感に満ちた農村の性の退廃と、その村から北アフリカの戦場に送られた下級兵士が経験する無慈悲な砂漠の戦場の二つの土地を交錯させる。対照的な気候と風景である二つの土地であるが、人間を荒っぽく突き放す厳しい風土は人間の精神の動きを同じように麻痺させる。
フランドルの農村での主人公の二人のセックスは、ほとんど生理的な排泄行為に等しい肉体の重なり合いに過ぎない。性行為の間には何の叙情的な心の交流はないように見える。北アフリカの過酷な戦場で、兵士はほとんど呆然としているだけのように見える。日常的な死に対する緊張感、乾燥し灼熱の土地が、彼らから人間的なものをはぎ取ってしまう。
不毛な愛をリアリティある表現で描き、砂を噛むような空しさが鑑賞中に心の中で広がっていく。しかし最後のシーンで微かな甘みが用意されていた。この甘みは希望をもたらすが、僕にはそれでもその希望はやはりはかない錯覚のようなものであり、この恋人たちの将来には悲劇的な展望しかないように思えてしまった。