閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ビューティ・クイーン・オブ・リナーン

http://www.parco-play.com/web/play/beauty/

  • 作:マーティン・マクドナー
  • 訳:目黒 条
  • 演出:長塚圭史
  • 美術:二村周作
  • 衣裳:前田文子
  • 照明:佐藤啓
  • 音響:加藤温
  • 舞台監督:菅野将機
  • 製作:山崎浩一
  • 企画:佐藤玄・田中希世子
  • プロデューサー:毛利美咲
  • 企画製作:株式会社パル
  • 出演:

モーリーン・フォラン…大竹しのぶ
マッグ・フォラン(その母親)…白石加代子
パートー・ドゥーリー(ハンサムな近所の男)…田中哲司
レイ・ドゥーリー(その弟)…長塚圭史

  • 評価:☆☆☆☆
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母娘の激しい確執の描写を軸に,アイルランド西部の片田舎の閉塞的な日常を悪意に満ちた黒いユーモアで描き出した作品.激しく罵り合う母娘は京依存的関係にあり,互いに憎しみ合いつつも離れることはできない.すでに四十になった娘の前に,彼女をこの田舎から連れ出してくれそうな青年が現れる.娘は状況からの脱出の予感に歓喜するが,結局は母親の妨害でその望みは断たれてしまう.
ほぼ百年前に書かれたシングの『西の国のプレイボーイ』を強く連想させる内容だ.しかしマクドナーの作品には,シングの作品にあった,牧歌的な雰囲気は一掃されて,田舎生活の退屈の絶望のみが露悪的に強調されている.両親の故郷であるアイルランド西部地方を希望のない牢獄として描くという自虐的態度に、アイルランド人が抱えるコンプレックス、屈折の大きさが示されているように思った.