閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

キル

野田地図NODA・MAP 第十三回公演
http://www.nodamap.com/02kiru/gaiyou.htm

  • 作・演出:野田秀樹
  • 美術:堀尾幸男
  • 照明:服部基
  • 衣裳:ひびのこづえ
  • 選曲・効果:高都幸男
  • 出演:妻夫木聡、広末涼子、勝村政信、高田聖子、山田まりや、村岡希美、市川しんぺー、中山祐一朗、小林勝也、高橋恵子野田秀樹
  • 上演時間:二時間二十分(休憩15分)
  • 劇場:渋谷 シアターコクーン
  • 満足度:☆☆☆☆★
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演目初見。ファッション業界の激しい競争とジンギスカンの生涯を重ねて描き出すという着想の独創性が唖然とするばかりに凄い。この意外な組合せからこのようなスケール感の叙事詩的作品が生まれうるとは誰が想像できただろう?二つの次元は中世の寓意文学のように互いの次元をときに行き来し、からみあいながら重層的に物語を紡いでいく。
大きな布を効果的に使った、板張りのシンプルな舞台(中央部に平行に奈落に落ちる段差が設けられている)は、その象徴性の高さによって広大な物語世界を暗示する。様々な演劇的創意が盛り込まれた舞台展開の鮮やかさ、駄洒落による言葉の重なりから発展していく奥行きのある物語、誕生の場面を三度反復させることで強調される叙事詩的時間感覚、古典作品のエピソードの巧みな引用など、野田秀樹の卓越した劇作術は圧倒的なボリューム感がある。
大変面白い舞台であることは言うまでもない。しかしなぜか僕は物語世界にすんなり入り込めず、疎外感を覚える。この種のファンタジーへの相性の問題かもしれない。完成度の高い芝居の後ろにある人為性・人工性に抵抗感を覚えてしまうというか。

広末のキンキン声やアイドルという属性は役柄とうまく適合していたように思った。広末涼子はとても人形的な雰囲気があり、そこが魅力だとう。