東京デスロック
REBIRTH#2 演劇LOVE2008〜愛の行方3本立て〜
http://deathlock.specters.net/
ディドロの小説『運命論者ジャック』を多田淳之介が60分に再構成するのだから,当然原作の世界を忠実に反映した舞台にはなっていない.原作のもっていた自己言及的・批評的な部分を極端に拡大して提示するというアイディアに演出家の非凡さを感じる.しかも二人の役者が持っている属性が,効果的に容赦なく利用されている.
ただこの演出家は着想には非凡さを感じることが多いが,その着想をシークエンスのなかで発展させる段階で不満を感じることがしばしばある.『ジャックとその主人』も中盤は単調さに陥った.だが最後のほうに用意された転換の仕掛けで持ちなおす.目隠し,本公演の始まりの口上,そして反復といった仕掛けが意外性をもたらし,原作のメタ小説的性質とうまくかみ合い,面白い効果を生み出していた.最後に盲目にさせられた主従二人が互いを探してさまよった挙句,邂逅する場面は,ばかばかしくてかつ感動的だった.