- 作者: カトリーヌ・アルレー,安堂信也
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2006/06/27
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 14回
- この商品を含むブログ (30件) を見る
評価:☆☆☆☆
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
通りがかりに覗いた古本屋で購入した.フランスの娯楽・推理小説で,しかも安堂信也先生の翻訳だったことが興味をひいた.僕は推理小説にはうとい.海外ものについてはなおさらだ.だからカトリーヌ・アルレーの名前も知らなかったのだが,訳書が何冊も出ているのをみるとフランスの推理小説家としてはかなり人気のある作家なのだろう.
『わらの女』は数年前に,登場人物を日本人に置き換えたうえで『美しい罠』というタイトルで昼帯ドラマとして放映されていたらしい.http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%8E%E3%81%97%E3%81%84%E7%BD%A0
目の付け所がいいと思う.機会があればドラマ版も見てみたい.
『わらの女』というタイトルはフランス語原題の《Femme de paille》の直訳だが,話の内容から考えると昼ドラマ版のタイトル『美しい罠』というのはとてもいい邦題だと思う.むしろ『わらの女』という直訳タイトルよりいい.フランス語の『paille』は「麦わら」の意味である.《Femme de paille》は,《Homme de paille》というフランス語にもとからある表現のもじりになっている.《Homme de paille》は麦わらのように「とるにたらぬ人物」を意味する以外に,「(多く悪事に関して)名義だけの人,ダミー」を意味する.作品の原題はこの後者の意味に基づくことは,作品を読めばあきらかだ.
大富豪の老人の財産を,本来相続の権利のない人間が緻密な計画によって,合法的に相続してしまう話である.読者を主人公の側にひきこんでいく語り口と展開が実に巧妙だ.最後のほうで主要人物二人の対話によって真相が明らかにされる場面での転換のあざやかさがすばらしい.そして容赦ない冷酷な結末に唖然とさせられる.