閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

S高原から

三条会
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  • 作:平田オリザ
  • 演出:関美能留
  • 舞台美術:石原敬
  • 照明:岩城保
  • 出演:大川潤子、榊原毅、立崎真紀子、橋口久男、中村岳人、渡部友一郎/江戸川卍丸(劇団上田)、桜内結う、山田裕子(第七劇場)/浅倉洋介(風琴工房)、大倉マヤ、小田さやか(Ort-d.d)、工藤真之介、近藤佑子、鈴木智香子(青年団)、永栄正顕
  • 上演時間:90分
  • 劇場:下北沢 ザ・スズナリ
  • 評価:☆☆☆☆★
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どこかひんやりとしていてよそよそしい平田オリザの原作が、三条会関美能留の演出によって激しくデフォルメされ、キュートなナンセンスに満ちたファルスに変化していた。珍妙で愉快な舞台だった。にぎやかなカオス。一見精緻に描かれている写実的な具象画が、実は色彩と継承の構成実験に過ぎないことを暴くかのように、『S高原より』のリアルな人物関係を描き出す繊細な台詞の重なりが、ここでは破壊的なナンセンスの材料となる。

原作の舞台はとある高原のサナトリウムなのだけれど、三条会の舞台では学校の教室である。学校のクラスのなかで『S高原から』が演じられる劇中劇構造なのかと思えば、確かに劇中劇っぽいところもあるのだけれど、劇中人物らしき人物が教室のなかに無造作に介入して学生たちとやりとりをはじめたりする。いやその無造作に立ち現れる人物たちの属性も、登場人物たちの属性と一致しているのかどうかはあやふやだ。いくつかの別の次元が重なりあり、混沌とした固まりのまま話が展開していくというカオス的状況が続く。

正直なところ、演出家の仕掛けるギミックの意味がわからない。疑問符だらけ。もし可能であるならば関美能留氏にこれらの仕掛けのひとつひとつについていちいちその意図を問いただしてみたい。とにかくガラクタだらけの乱雑なおもちゃ箱のような雰囲気のなか『S高原から』が無理矢理に展開される。わけがわからないのだけれど、意味不明の仕掛けの数々が何だかおかしくてたまらない。意味ありげな台詞がことごとく、無意味化されていっているようにも思う。平田戯曲の傑作がどんどん空虚になっていく。台詞に含まれるノイズのような部分が極端に肥大化され、強調・反復されているような感じもした。