閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

息もできない

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息もできない(2008) BREATHLESS

  • 上映時間:130分
  • 製作国:韓国
  • 初公開年月:2010/03/20
  • 監督:ヤン・イクチュン
  • 製作:ヤン・イクチュン
  • 脚本:ヤン・イクチュン
  • 撮影:ユン・チョンホ
  • 編集:ヤン・イクチュン
  • 音楽:ジ・インヴィジブル・フィッシュ
  • 出演:ヤン・イクチュン、キム・コッピ、イ・ファン、チョン・マンシク、ユン・スンフン、キム・ヒス、パク・チョンスン、チェ・ヨンミン
  • 映画館:新宿武蔵野館
  • 評価:☆☆☆☆☆
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数々の映画賞を受賞し、映画評、ブログなど方々で評判がとてもよい作品。大いに期待して観に行ったのだが、その期待以上の凄い作品だった。猛烈に素晴らしい。今年これまでに私が見た映画のなかではダントツのナンバーワンだ。久々に映画作品を見て魂を鷲掴みされたような思いを味わった。

ぐれないほうが不思議なほど荒廃した家庭はこの世に少なくないはずだ。よりどころとすべき親が、暴君として君臨し、理不尽な抑圧を日常的に繰り返すような家庭である。そうした家庭で育った人間の孤独と絶望が描かれる。悲痛でやり切れない暴力が連鎖する中、家族が潜在的に抱えるおぞましさがスクリーン上に暴かれる。そんな荒廃の日常のなかに、ようやく見つけ出した安らぎと喜びの美しさと脆さに胸が締め付けられるような思いを味わう。

お話自体はありきたりといえばありきたりで意外性はないのだが。頭を押さえつけられて「おらっ、目をそらすな!見ろ!」と怒鳴られている感じというか。冒頭、出会いの場面、そして夜の漢江、素晴らし過ぎる。
役者、演出、ドラマ、音楽の全てがすばらしいハーモニーを奏でる。ユーモラスで切なくて叙情的で、そしてとびきり悲壮な音楽に身を浸した。
韓国映画界のポテンシャルの豊かさを感じさせる作品だった。