閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

小学生向け活弁映画上映 ぼくも、わたしも、活弁で映画を見るのだ!その6

  • 活動弁士:澤登翠(さわとみどり)
  • 上映作品:『キートンの酋長』(1921年)、『キートンの警官騒動』(1922年);『チャップリンの冒険』(1917年)、『チャップリンの大酔』(1916年)
  • 会場:三鷹市芸術文化センター 星のホール
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三鷹市芸術文化センターでの子供向け活弁映画上映会に娘と一緒に行った。弁士は澤登翠。この世界では有名な人のようだ。
私が活弁付き映画を見るのは多分高校生のとき、学校の鑑賞会で見て以来のことだが、活弁無声映画の上映会はかなり頻繁に行われているようで、ファンも多いようだ。三鷹芸術文化センターでの子供向け活弁無声映画上映会は今回が六回目だと言う。人気企画のようで会場の星のホールはほぼ満席だった。

プログラムは『キートンの酋長』、『キートンの警官騒動』、休憩を挟んで『チャップリンの冒険』、『チャップリンの大酔』の四本。いずれも20分程度の作品である。『キートンの警官騒動』は、三鷹の小学生から高校生がメンバーのみたかジュニア・オーケストラの生演奏付きで上映された。

キートンの映画は中学か高校の頃、NHKで連続放映されていたのを何となく見ていた記憶がある。特に熱心に見ていたわけではないが、「バスター・キートンてのはハンサムだなあ」と思いながら見ていたことを、今回見て思い出した。
今回見た四本の作品のなかでは二番目の『キートンの警官騒動』が一番面白かった。警官の大軍に追っかけられるキートンの様子は、後のアメリカ娯楽映画のカーチェイスの場面、特に『ブルース・ブラザーズ』のラストを想起させた。ギャグの小技が洒落ていてキレがいいし、展開にスピード感がある。そしてキートンの優れた身体能力と独創的なアイディアが、意外性のあるギャグを作り出す。
また生演奏のみたかジュニア・オケの演奏が思いの外よかった。アマチュアの子供のオケということで、正直レベルの低い演奏に違いないと覚悟していたのだけれど、きっちりと練習を積んだことを感じさせる安定した演奏振りで映画に彩りを添えていた。
活弁もやはり興味深い。映像に機敏に反応して、声色の多彩な使い分けや即興性を感じさせる語り口はアクロバチックでかっこいい。

チャップリンの大酔』はチャップリンが酔っ払いを演じる。ほとんど一人芝居の無言劇。優れた仕掛けの数々とチャップリンのパントマイム技芸が見事だった。

百年前のギャグ映画に今の子供たちが活発に反応し、ゲラゲラ笑っている様子がとても興味深い。勿論大人が見ても面白い作品である。おそらく百年前の上映時にも同じように老若男女の観客は反応していたのではないだろうか。