閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

こども映画館2012「活弁と音楽の世界―映画と乗り物」

こども映画館2012
《上映作品》
『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1895年)
フランス/撮影:ルイ・リュミエール
駅に列車が到着するまでを撮影した、映画が誕生した最初期の映画!(1分)
『アメリカ消防夫の生活』(1903年)
アメリカ/監督:E・S・ポーター
火事場に入って親子を助ける消防夫たちのお話。昔の消防車は馬がくっついていた?!(7分)
『大列車強盗』(1903年)
アメリカ/監督:E・S・ポーター
強盗団が列車を襲ってきた!馬と列車と拳銃と、西部劇がここに誕生!(11分)
『ドリーの冒険』(1908年)
アメリカ/監督:D・W・グリフィス
少女ドリーが誘拐され、タルに乗って川を下る大冒険!アメリカ映画の父、D・W・グリフィスの監督第1作!(12分)
『悪太郎(キートンの強盗騒動)』(1921年)
アメリカ/監督:バスター・キートン、マル・セント・クレア
強盗犯に間違えられ、警察官に追われるキートン!列車に自動車、トラック、馬の彫像まで!乗り物満載のアクション・コメディ!(19分)

小1の息子と一緒に京橋のフィルムセンターで行われたこども映画館という企画に行った。中学生以下の子供同伴でないと参加できないプログラムで夏休み通に四回ある。日によってプログラムが異なり、私が行ったのは「活弁と音楽の世界─映画と乗り物」というもの。乗り物が出てくる無声映画短編を、活弁、生演奏付きで見せるというものである。
上映されたのはリュミエール兄弟の『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1895)、ポーター『アメリカ消防夫の生活』(1903)、ポーター『大列車強盗』(1903)、グリフィス『ドリーの冒険』(1908)、そしてキートン『悪太郎(キートンの強盗騒動』(1921)の五本。

最初のリュミーエルの作品は1分弱しかない。音楽もなし。駅に列車が到着して、客たちが降りる場面のみ。あまりにもあっけないので唖然としてしまう。ハンサムなお兄さんが進行役をやっていていろいろ説明を入れるのだけれど、説明が慣れていない感じだし、子供は小学校低学年が多いので映画史、映画の仕組みなどの説明もあまり子供たちの関心をひかない感じだった。

時代が進むにつれ段々、劇映画っぽくなってくるのではあるが、それでも『ドリーの冒険』までは当時の映画試作品を見ている感じで、歴史的資料としては重要なのかもしれないが、別に面白いものではない。

普段から落ち着きのない息子ががさがさし始める。これは失敗だったかな、と思ったのだけれど最後に見たキートン『悪太郎』は傑作だった。19分の短い作品。強盗犯に間違えられたキートンが警察官追われて逃げ回るという作品なのだけれど、今見ても、その身体芸の切れのよさ、展開のつながりの巧さは見事なもので引き込まれてしまう。これは歴史的映画資料ではなくて、現代人の鑑賞に耐える作品だ。若い美人活弁士、佐々木亜希子の語りも心地よく、映像の内容にぴったりとタイミングを合わせ絶妙の音楽で支えるFEBOの音楽も、作品の面白さを倍増させていたことも間違いない。私の子供含め、会場の子供たちも大喜びで大喝采。もちろん大人たちも楽しんで見ていて、上映会場の雰囲気がキートンによって一気に盛り上がった。活弁+生演奏による支えも大きかったが、子供も大人も大喜びで、まるでライブ会場にいるような盛り上がりと幸せな一体感が上映会場に形成されていた。昔、キートンの映画を映画館で見た人たちもあんな感じだったのかな。キートンだけのプログラムでもよかったかもしれない。