shelf vol. 12
shelf volume12 「構成・イプセン― Composition/Ibsen」
- 原作:ヘンリック・イプセン 『幽霊』 より
- 翻訳:毛利三彌 ほか
- 構成・演出:矢野靖人
- 音響・ドラマトゥルク:荒木まや
- 照明:則武鶴代
- 衣裳:竹内陽子
- 写真:原田真理
- 宣伝美術:オクマタモツ
- 出演:川渕優子、三橋麻子(Ort-d.d)、櫻井晋、春日茉衣、鈴木正孝(一徳会/K・A・G)、沖渡崇史(一徳会/K・A・G)
- 上演時間:90分
- 劇場:北池袋 Atelier SENTIO
- 評価:☆☆☆☆
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劇評サイト、wonderlandにこの公演の劇評を投稿した。
http://www.wonderlands.jp/archives/19314/
プレビュー初日とその一週間後の二回見た。最初に見たときは自分にはこういうスタイルの芝居は合わないなと思ったのだけれど、ツイッターにつぶやいた感想を巡っていくつかやりとりがあって、もう一度見たいと思った。「私の趣味じゃない」とか失礼な感想を呟いていたにもかかわらず、演出の矢野さんが丁寧に相手をしてくれたので、やっぱり自分の趣味でないなら、ないでもう一度ちゃんと見ておいたほうがいいかなと思ったのだ。それで一週間後に二度目の観劇。自分としては同じ公演を二回見るのは極めて稀だ。
省かれている場面はあるけれど、基本的には「幽霊」がそのまま提示される。演出家の独自の読みによって原作を新しい視点から再構成しているので、原題をそのまま使いたくない、という演出家の意図はわからないでもないけれど、「構成・イプセン― Composition/Ibsen」という公演タイトルは漠然としすぎているように思う。
一回目よりも二回目のほうが愉しんで見ることができた。芝居のクオリティ自体もプレビュー初日と比べると上がっていたし、私のほうも演技スタイルに慣れたというのもあるかもしれない。スタイリッシュでかっこいい舞台だが、表現が凝縮され過ぎて息苦しい感じのする舞台でもあった。悲壮な芝居だけに私は表現に遊び、軽やかさ、乾いた感じが欲しい。悲壮な場面で役者が泣きわめくよりもむしろ、カラッとした陽気な芝居で対比させるほうが私の好みだ。例えば《ランメルモールのルチア》の「狂乱の場」のような。でも演出家のストイシズムはそれを求めない。モダンで直球の『幽霊』だった。三幕は完璧。息を呑む密度と美しさ。
苦手かなと思う芝居を二度観て、さらにそれについて劇評を書いたことで、自分の観客としての幅は広がったかなという気がする。