閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ただちに犬 Bitter

劇団どくんご 第24番
劇団どくんご HomePage

  • 構成・演出:どいの
  • 制作:時折旬、プラスマイナスゼロ、黄色い複素平面社
  • エグゼクティブ・アドバイザー:かえちん
  • 出演:暗黒健太、五月うか、2B、まほ、柳原良平(ぬるり組合)、ワタナベヨヲコ(ほか)
  • 会場:新木場 夢の島公園第五福竜丸展示館脇特設テント
  • 上演時間:2時間半以上
  • 評価:☆☆☆☆☆
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1年のうち7ヶ月間日本各地を回り、特設テントで公演を行う劇団どくんこの公演を新木場の夢の島公園に見にいく。活動歴20年以上の劇団だそうだが私が見るのはこれがはじめてだ。昨年劇評サイトwonderlandに掲載された柳沢望氏によるどくんご公演の劇評ではじめて私はこの旅する劇団を知り関心を持った。
http://www.wonderlands.jp/index.php?itemid=1110

期待はまったく裏切られなかった。刺激的で楽しくて怪しくて、とにかく素晴らしい公演だった。私が芝居を見にいくのにはちゃんと言葉にできないものも含めいくつかもの理由があると思うのだが、そのうちのいくつかにどくんごの公演は確実に応えるものだった。強烈な個性と異能の持ち主である役者たちのエネルギーが作り出す非日常によって日常が激しく揺さぶられる。その揺さぶりがもたらす快感の強烈さに酔う。どくんこはグロテスクでキッチュで荒々しい表現によってわれわれを異世界へと誘う。仮設テント(というより掘っ立て小屋のほうが名称としては相応しいかもしれない)の劇場を目にしたときからユーモラスで不気味なメルヘンの世界に招き入れられる。

役者による口上、音楽演奏のオープニングのあと、意味不明の架空言語で演じられる前座芝居が演じられる。この前芝居はその後に延々と展開する悪夢の連鎖のようなバリエーションの主題を示すものだ。上演時間は2時間ぐらいと予告されていたが、実際には2時間半を超えていた。殺されてしまった犬の犯人捜しが全体を結びつける核となる。しかし実際には「殺されてしまった犬」(人間とほぼ同じ大きさの白い犬のぬいぐるみが舞台上にある)を核に、6人のエキセントリックな風貌の役者たちが自由に想像を膨らませた夢幻的笑劇的なエピソードが、夢の展開のようなゆるやかな連鎖のなかで延々と演じられる。

中世ヨーロッパにはキリスト聖誕祭の後の2週間ほどの間に「阿呆祭」という日常の秩序をひっくりかえした狂騒的な祝祭が行う習慣があったそうだ。一年に一度くらいは日常を転覆させるようなバカ騒ぎをやったほうが精神の健康にとってはいいのかもしれない。どくんこの芝居に私はこの阿呆祭を想起した。ナンセンスでグロテスクな場面の連続を眺めていくうちに、その馬鹿馬鹿しさにいつしか没入してしまっている自分に気づく。その表現はアングラっぽい不可解さに満ちているが、破格にポップで滑稽だ。幼児から老人まで引き込むことができる、おそるべきふところの深さを持っている。エンドレスで続くかのような阿呆祭のもたらす高揚感にしびれるような快感を覚える。どくんこの芝居が作り出すこの混沌と混乱の陽気な悪夢をぜひもっと多くの人に体験して欲しい。

どくんごの旅公演は11月下旬まで続く。
http://www.dokungo.com/php/ichiran.php
東京近郊では9月14日(火)、15日(水)に飯能の飯能市中央公園で公演がある。私は両日とも夜に用事が入っていて残念ながら見ることができない。この後東海、関西、四国、九州で公演が予定されている。未見の方はぜひ足を運んで欲しい。飯を一食抜いてでも観に行く価値はある。
古今東西、旅をしながら芸や芝居を見せる旅芸人の一座は存在し続ける。どくんごの芝居でわれわれは自分たちの先祖も楽しんだであろう非日常の快楽、粗末な仮舞台が作り出す非日常の濃密な幻想を存分に味わうことができる。