http://www.geigeki.jp/performance/theater016/
- 作:フランク・ヴェデキント
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演出・脚色:シルヴィウ・プルカレーテ
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翻訳:ヴィクトル・クコラデツ
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装置・照明:ヘルムト・ストゥルメル
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衣裳:リア・マンツォク
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音楽:ヴァシレ・シルリ
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出演:オフェリア・ポピ、コンスタンティン・キリアック 他
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劇場:池袋 東京芸術劇場プレイハウス内特設劇場
- 上演時間:2時間半(休憩20分)
- 評価:☆☆☆★
この作品については小劇場劇評サイト〈ワンダーランド〉主催の劇評セミナーに、劇法を投稿し、それが以下のサイトに掲載されている。
http://www.wonderlands.jp/seminar2012/mt08/3/
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東京芸術劇場の中ホールにあたるプレイハウスでの上演だったが、通常の劇場空間ではなく、プレイハウス内の舞台上に設置された特設ステージでの上演だった。6段の急なひな壇状の座席が馬てい型に中央の演技場を囲んでいる。おそらくサーカステントの客席をイメージしているのだと思うが[実際には、ツィッターで教えられたのだが、17-18世紀ヨーロッパにあった解剖学教室を模倣したものらしい。上記のリンク先、ワンダーランド掲載の劇評を参照のこと]。中央の演技場の奥にはカーテンが引かれていて、そのカーテンの向こう側にもステージがある。中央演技場は、奥のステージから見るとエプロン状に客席内にはみ出したかたちになっている。
『ルル』の第一部にあたる『地霊』のプロローグは、見世物小屋の口上で始まり、そのなかで動物に喩えられた登場人物たちの紹介が行われる。客席の形状はこのプロローグの役割を強調したものになっている。ユニークな形状の客席に期待は高まるが、芝居自体は案外オーソドックスな演出だった。
『地霊』と『パンドラの匣』の二部で構成される『ルル』は、そのまま上演するとおそらく5、6時間はかかりそうなボリュームがある。今回の上演では抜粋、再編集版となるが、『パンドラの匣』のエピソードが大きく省略されていた。
彫りの深い外人役者がやるから雰囲気はさすがにそれっぽく様になっていたけれど、人物造形自体は類型的で、個性は乏しい。ルル役は金髪ショートヘアの女性。悪くない。いい役者だとは思うけれど、ルル役を演じる女優ならばこれくらいの存在感と芝居がなければならない。私が思い描いていた原作のイメージとは異なるタイプだった。私はもっと無垢で少女っぽい女性を思い描いていた。
テキストレジはかなり荒っぽい感じが私にはした。原作を知らない人は、人物関係は理解できたのだろうか。ルル以外の人物の印象が弱く、ドラマが薄い。舞台美術はそれなりにユニークで面白いものだったけれど。全体的には『ルル』を扱うに十分な水準の舞台だったけれど、強烈な個性は感じない。
一幕の最初の部分で、ルルが身につけていた下着を脱ぐのだが、その後、めくれ上がったワンピースの下に、肌色のスパッツが見えたのには興ざめしてしまった。ルルはあんなダサいものを履くわけがない。下半身露出がNGならば、最初から下着を脱ぐ場面をカットしていればいいものを。ルルを演じるヨーロッパの女優が全裸NGとは。ルーマニア、保守的過ぎる。おっぱいは見せていたが。ドイツなら当然、全裸でもっとえぐいことを舞台上でやったはず。前衛というのはそういうもんだ。生ぬるい。