閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

わたしはロランス LAURENCE ANYWAYS

  • 上映時間:168分
  • 製作国:カナダ/フランス
  • 公開情報 劇場公開(アップリンク)
  • 初公開年月:2013/09/07
  • 監督:グザヴィエ・ドラン
  • 製作:リズ・ラフォンティーヌ
  • 脚本:グザヴィエ・ドラン
  • 撮影:イヴ・ベランジェ
  • 美術:アン・プリチャード
  • 衣装:グザヴィエ・ドラン
  • 編集:グザヴィエ・ドラン
  • 音楽:ノイア
  • 出演:メルヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ
  • 映画館:新宿 シネマカリテ
  • 評価:☆☆☆☆
  • http://www.uplink.co.jp/laurence/

30歳の誕生日に性同一性障害であることをカミングアウトし、女として生きていくことを決意したロランスとその恋人フレッドの10年間の葛藤を描く恋愛映画。いかにもおしゃれでナルシスティック、アーティスティックな雰囲気のフランス(語圏)映画で、ふだんの私ならむしろ見に行くのを避ける種類の作品ではあるけれど、まだ24歳だという監督のグザヴィエ・ドランがケベック人ということで見に行った。

カナダのなかでも先進的と言われるケベック、モントリオールの社会でも、女装する性同一障害者への偏見は根強い。ロランスは欺瞞を抱えた生き方に我慢できずみずからマージナルな存在であることを引き受けるが、そのために恋人フレッドや母親を傷つけてしまうことに苦しむ。フレッドは女として生きるようになった恋人を受け入れようと努力し、協力しようとするが、性同一性障害者に対する社会的偏見、そして結果的に女同士が愛し合うという倒錯的恋愛に陥ったことへの混乱を抱え、それを解決できない。

互いにすっきりしない、ねっとりとした後味の悪さをひきずりつつ、二人の愛は進んで行く。

リアルで切実な正統的な恋愛映画であり、語源的な意味におけるメロドラマでもある。数多くの曲が非常に効果的なやりかたでエピソードのなかに挿入されていて、その部分だけ取り出しても独立したミュージック・クリップとなるような感じだ。そしてケベック、とりわけ冬の景色の美しさが印象的だ。ときにこうした風景は幻想的な映像処理、演出とともに現れる。はっと息をのみ、引き込まれてしまうような美しい場面がいくつかあった。モンレアルケベックの土地の持つ独特の雰囲気が映像のなかで生かされている。