閑人手帖

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2022/12/04 平原演劇祭2022第21部 #神曲2022@目黒区駒場住区センター

平原演劇祭2022第21部 #神曲2022

 2022年最初に開催された平原演劇祭が高野竜が20年以上前に書いた大作戯曲『神曲』の第一部の読み合わせ会だった。

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 今回、平原演劇祭2022第21部(!)では、『神曲』三部作の第二部「テンペルホフ」を読んだ。参加者は13、4名。登場人物が全部で30名近くいるので、全員に役が振り当てられた。開始は17時過ぎで、途中休憩をはさみ読み終えたのは19時半過ぎだった。

 主宰の高野竜が今日も意識はあったものの、ヘロヘロの状態だった。読み合わせ中もうつらうつらしている時間があったようだ。かなり長い戯曲なのでさっさと読み始めなければ、住区センターの退室時間になってしまうのでは、という懸念があったのだが、高野はぼんやりしていて進行を仕切って進められるような感じではない。なので私が強引に役の振り分けを仕切り、読見合わせを始めた。

  昨年末の崖転落による脳挫傷以来、高野竜の状態はすこぶる不安定だ。こんな状態で野外公演を含み、今年21回も公演を行っているのだから常軌を逸している。おそらく高野は自身の健康状態を思うと、今後長きにわたって自分が演劇活動を継続できるとは考えていないのだろう。だからこそ公演がこんな異常なペースで行われているのだ。

 

 平原演劇祭の主な開催告知の手段は、twitter(@heigenfes)だ。高野の調子がいいときには、note(平原演劇祭 heigenfes|note)に開催告知が掲載されることがある。今回の神曲第2部本読みはnoteに告知がなく、twitterでの告知もあまり活発にされていなかったので、いったい何人の観客/参加者が集まるのだろうかとちょっと心配していたのだが、当日は13、4名の思いのほか多くの参加者がいた。しかもみな、初見で戯曲を読んでいるにもかかわらず、「えっ!?」と驚くような読み巧者が集まっていた。

 

[撮影:ぼのぼのさん(@masato009)]

 『神曲』は20年以上前に高野が書いた戯曲ということで、近年の彼の地誌戯曲とは文体や雰囲気がかなり異なる。高野さん特有の壮大な地理感覚、時間感覚を味わうことができる伝奇的ロマンで、そのユーモラスな饒舌体の台詞には、唐十郎、あるいはフェリーニを連想させるような濃厚な詩情が感じられる。言葉のやりとりから風景が思い浮かぶ。今回は私はこの場の主役といっていい重要な役柄を充てらたので、高野の劇詩の楽しさと美しさを演者として堪能することができた。途中、合唱の場面などもあり、参加者全員で盛り上がって、戯曲の世界を楽しむことができたように思う。

 平原演劇祭には、自分が小学生のころ、学校のクラスでやっていたお楽しみ会という行事の雰囲気も連想することがある。演者/観客が対峙するのではなく、作品を通してそこに居る者たちが一時の非日常の時空を共有し、つかのまのユートピア的共同体が形成されるような。ささやかな会合・公演であるが、その時空の充実感・幸福感は独特のものだ。

 今日は終了後、参加者で集合写真を撮影した。高野さんは真ん中で好々爺のようにちょこんと座っている。確かにこの写真が伝えるような、レトロでノスタルジックな時間を楽しむことができた読む会だった。

[撮影:ぼのぼのさん(@masato009)]

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