閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

「動く画像」展@ポンピドゥ・センター

Le Mouvement des images@Centre Pompidou
ポンピドーを二時間ほどかけて回る.「動く絵」という企画展.企画内容からいって当然映像関連の展示が多いが,こうした展示は必然的に視聴側の観賞の自由が時間軸に制限される.その結果面白そうなわりには,いちいち観るのが面倒でそれほどには面白くない.常設展示がかなり削られてしまっていたのががっかり.
企画展で興味をひいたのは,同性愛者を含む複数のカップルの日常的なセックスを撮影した写真のスライド上映.ビヨークの歌う聖歌がバックに流れていて,その歌の魅力に大きく負っているのがずるい感じもするが,これほど私的なセックスの撮影を許されるには,撮影者と被撮影者の間にはよほど深い信頼関係が築かれていなくてはならない.羽仁進が学校生活を撮影したドキュメンタリー映画撮影のときに,子供たちがカメラに飽きてカメラの存在を意識しないようになるまで,本当の撮影開始まで一ヶ月ほど教室内にカメラを放置したままにした,というようなことを聞いたことがある.スライドで次々と映し出される他者の性生活の自然な様子はこのエピソードを想起させる.アダルト・ビデオなどで見られる演出された性行為ではない,きわめて自然に近い,私的な状態での他人のセックスの様子をのぞきみるのは実に興味深い.自然に近いといっても第三者に撮影されるのだから多少はがんばっているのだろうが.ビヨークの歌声の効果もあり,エロティシズムは案外感じない.「ふーん,こういうふうにするんだ」と心の中でつぶやきながら観賞.この展示は他の展示に比べ明らかに人気が高かった.