閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

透明人間の告白

透明人間の告白〈上〉 (新潮文庫)透明人間の告白〈下〉 (新潮文庫)

  • 作:H.F. Saint
  • 翻訳:高見浩
  • 出版年:1992年(原作は1987年)
  • 評価:☆☆☆★
                                                                • -

SFを含む海外の作家の娯楽小説はごくまれにしか読まない。この本はどこかで紹介されていたのを目にして、Amazonで検索したら古本が1円で売っていたのだ。実際に支払う金額は1円+送料なのだけれど。郵便局を使わず、宅配業者のサービスを利用すればAmazon規定の送料より安く発送することができるらしい。
「透明人間」となるとH.G.ウェルズのものが古典のようだがこちらも未読。ただ透明人間という題材にはそれなりの関心がある。のぞき見をしても絶対にこちらの存在が気づかれないならば、のぞかずにいられるような人間では僕はない。他人のプライバシー、とりわけ性生活などは、やはりもし自分が透明人間だったらのぞき見せずにはおられないだろう。
セイントの透明人間では意外なことにこうした「のぞき」願望を満たしてくれるような描写は案外少ない。かなりしつような(読者サービスをおそらく意識したのだろうが)性描写は二カ所あるけれども、うーん、なぜかこうした箇所はあまり面白くない。この本の読ませどころは、透明人間になった場合に訪れるであろう生活上の不便を細々と書いてある部分、透明人間の捕獲しようとする政府秘密情報組織との攻防を記した冒険小説的部分だと思う。透明人間にいたるまでの事情を記した冒頭部が冗漫で退屈なのが欠点。この冒頭部を乗り越えられず、購入してから長い間本棚で眠ったままになっていた。
映画化もされている。映画では透明人間の「恋」の部分をもっと膨らませているのだろうか。
DVDasin:B000MQ5854