閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

小説

姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』文藝春秋、2018年。

彼女は頭が悪いから 作者:姫野 カオルコ 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2018/07/20 メディア: 単行本 心がザラザラとするような後味の悪い小説だった。2016年に起こった東大生5人による女子大生への強制猥褻事件を取材した小説である。この小説に関心を…

表裏井上ひさし協奏曲

表裏井上ひさし協奏曲作者: 西舘好子出版社/メーカー: 牧野出版発売日: 2011/09メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 24回この商品を含むブログ (11件) を見る 評価:☆☆☆☆★ - 井上ひさしの前妻、西舘好子による井上ひさし伝。井上ひさしのDVの実態については…

小谷野敦『東海道五十一駅』

東海道五十一駅作者: 小谷野敦出版社/メーカー: アルファベータ発売日: 2011/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 15回この商品を含むブログ (8件) を見る 評価:☆☆☆☆ - 最近は小説を読みそうな人に会うと、私はこの小説集を話題に出すことが多い。私はこ…

砂漠の船

砂漠の船 (双葉文庫)作者: 篠田節子出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2008/01/10メディア: 文庫 クリック: 3回この商品を含むブログ (9件) を見る 評価:☆☆☆☆★ - 何となく久しぶりに篠田節子の小説を読んだ。 『砂漠の船』は都内のすでにくたびれた雰囲気のニ…

ダンシング・ヴァニティ

ダンシング・ヴァニティ (新潮文庫)作者: 筒井康隆出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/12メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 26回この商品を含むブログ (22件) を見る 評価:☆☆☆☆☆ - ミニマル・ミュージックのように同じエピソードが細部に少しずつ変化を…

中島敦殺人事件

中島敦殺人事件作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 論創社発売日: 2009/12メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログ (10件) を見る 作:小谷野敦 評価:☆☆☆☆ - 『美人作家は二度死ぬ』に続いて、女子大大学院で国文学を専攻する菊池涼子が…

『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』

二度はゆけぬ町の地図作者: 西村賢太出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2007/11メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 22回この商品を含むブログ (24件) を見る 小銭をかぞえる作者: 西村賢太出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/09メディア: 単行本 クリ…

美人作家は二度死ぬ

美人作家は二度死ぬ作者: 小谷野敦出版社/メーカー: 論創社発売日: 2009/01メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 128回この商品を含むブログ (14件) を見る 評価:☆☆☆☆★ - 「美人作家は二度死ぬ」と「純文学の祭り」の二編を所収するが、「純文学の祭り」は…

アンジェラ・バーク『塩の水のほとりで』

塩の水のほとりで作者: アンジェラ・バーク,渡辺洋子出版社/メーカー: 冬花社発売日: 2008/07/01メディア: ハードカバー クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る 作:あんじぇら・ばーく 訳:渡辺洋子 評価:☆☆☆☆☆ - 著者はアイルランド人の女性作…

わらの女

わらの女 【新版】 (創元推理文庫)作者: カトリーヌ・アルレー,安堂信也出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2006/06/27メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 14回この商品を含むブログ (30件) を見る 評価:☆☆☆☆ - 通りがかりに覗いた古本屋で購入した.フラ…

海の仙人

海の仙人 (新潮文庫)作者: 絲山秋子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/12メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 30回この商品を含むブログ (165件) を見る 評価:☆☆☆☆★ - 初めて読んだ絲山秋子の中編小説。図書館で暇つぶし用の本を探していてなんとなく手に…

楽観的な方のケース

岡田利規「楽観的な方のケース」『新潮』第105巻第6号(2008年6月号)、6-18頁。 評価:☆☆☆★ - チェルフィッチュ主宰の岡田利規の小説。その演劇作品を思うと、拍子抜けするほど普通の小説。あるいは普通っぽい外観の下にもしかすると独創的な仕掛けがあるの…

グランド・フィナーレ

グランド・フィナーレ (講談社文庫)作者: 阿部和重出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/07/14メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 81回この商品を含むブログ (83件) を見る 評価:☆☆☆☆ - 地域図書館の返却棚にあったのを何となく借りる。表題作「グランド・…

母の発達

母の発達 (河出文庫―文芸コレクション)作者: 笙野頼子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1999/05メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 41回この商品を含むブログ (61件) を見る 評価:☆☆☆☆★ - マイミクが絶賛していたのに好奇心を刺激されて読んでみた。笙…

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)作者: 本谷有希子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/05/15メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 74回この商品を含むブログ (213件) を見る 評価:☆☆☆☆ - この間見た映画の原作小説。一番最初に書かれたのは戯曲…

童貞放浪記

http://www.bunshun.co.jp/mag/bungakukai/index.htm 小谷野敦、「童貞放浪記」、『文學界』、第61巻10号(2007年10月号)、159-185頁。 評価:☆☆☆☆ - 三十歳童貞男の猛烈に切なくもあると同時に、何とも言えず殺伐とした描写に読んでいて胸が締め付けられる…

椿姫 La Dame aux Camelias (1848)

アレクサンドル・デュマ・フィス Alexandre Dumas (fils) [1824-1895] 椿姫 (新潮文庫)作者: デュマ・フィス,新庄嘉章出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1950/12/06メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 20回この商品を含むブログ (39件) を見る 評価:☆☆☆☆☆ - …

冷い夏、暑い夏

冷い夏、熱い夏 (新潮文庫)作者: 吉村昭出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1990/06/27メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 12回この商品を含むブログ (9件) を見る 評価:☆☆☆☆ - 自己の分身のように緊密な交流を続けてきた著者の弟が五〇歳で肺ガンによって死ぬ…

連舞(つれまい)

連舞 (集英社文庫 97-A)作者: 有吉佐和子出版社/メーカー: 集英社発売日: 1979/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る 評価:☆☆☆☆ - 日本舞踊の世界を題材に、芸道の魔にとりつかれた家族関係のおぞましさを、一流の芸能者である母親からの愛情…

若い芸術家の肖像

若い芸術家の肖像 (岩波文庫)作者: ジョイス,James Joyce,大澤正佳出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/06/15メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (10件) を見る 評価:☆☆☆★ - ジョイスが自身の幼い日から、大学時代までの精神的…

破獄

破獄 (新潮文庫)作者: 吉村昭出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1986/12/23メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 41回この商品を含むブログ (58件) を見る 評価:☆☆☆☆ - 初版は岩波書店から1983年。読売文学賞受賞作品。 昭和11,17,19,23と4度に渡って脱獄を…

宇田川心中

小林恭二(中公文庫、2007年) 評価:☆☆☆☆☆ - 単行本、2004年、中央公論新社。鎌倉時代(承久年間)、幕末、そして現代の三つの時代に現われ出るシンプルながら激しい恋を、近松門左衛門、鶴屋南北、河竹黙阿弥などの歌舞伎狂言で使われる設定を下敷きにして…

双生児 The Separation

クリストファー・プリースト Christopher Priest/古沢嘉通訳(早川書房、2007年) 評価:☆☆☆☆ - 第二次世界大戦を舞台とする「もう一つの歴史」もの。ちょっとしたきっかけによって分離していく双生児の運命とその双生児のそれぞれがかかわることになった第…

愛のひだりがわ

筒井康隆(新潮文庫、2006年) ISBN:4101171497:image:small 評価:☆☆☆☆★ - 思春期直前の少女を主人公とする児童文学小説の傑作。荒廃した近未来の日本社会を舞台に、人や社会の様々な醜さと優しさを直視しながら、力強く成長していく少女の姿を描き出す。「…

マエストロ

篠田節子(角川文庫、2005年) 評価:☆☆☆★ - 92年に発表された篠田節子の4作目の単行本、『変身─Metamorphosis─』を改題改訂して文庫化したもの。改題後の題名が示すように音楽小説である。芸大教授のバイオリン斡旋詐欺が大きく報道されたことがあったが、…

一の糸

有吉佐和子 [asin:B000J97C8K:detail] 評価:☆☆☆☆★ - 「一の糸」とは三味線の三本の弦のうち,一番太い糸.文楽の三味線弾きを題材にした長編芸道小説である. 天才三味線弾きの後妻となる茜という,裕福な商家に生まれ天真爛漫に育った女性が叙述の軸となっ…

非道,行ずべからず

松井今朝子(集英社文庫,2005年) 評価:☆☆☆☆★ - 文庫版で539ページ.江戸の歌舞伎小屋,中村座で起こった連続殺人事件を巡る長編推理小説.名探偵が鮮やかに謎解きをするわけではない.謎解きではなく事件の背景にある当時の歌舞伎役者とその周辺の演劇人…

奴の小万と呼ばれた女

http://www.kesako.jp/kesako_archives/default/30.html 松井今朝子(講談社文庫,2003年) 評価:☆☆☆☆ - 「奴の小万」という人物と彼女を題材とする文芸作品については以下のページに詳しい. http://park22.wakwak.com/~kozu5-2/hiroba-05/04.07.23noda.ht…

香華

有吉佐和子(新潮文庫,1965年) 評価:☆☆☆☆ - 単行本初版,中央公論社,昭和37年. 母親に裏切られ,捨てられながらも,世間の荒波に抗し健気に力強く生きる女性の成長の過程を描く教養小説.彼女が芸者として過ごした明治末期から大正にかけての花柳界の詳…

暗渠の宿

西村賢太(新潮社,2006年) 評価:☆☆☆☆ - 「けがれなき酒のへど」,「暗渠の宿」の二編を収録.158ページ. 極めて悪趣味な露悪と自虐に満ちた反時代的私小説.破滅型人生への文学的自己陶酔に満ちた内容は,現代においては純文学的というよりはむしろつっ…